人事課題解決ノウハウ

事例から学ぶハラスメント教育

ハラスメントを撲滅し、笑顔溢れる職場の実現を

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ポイントを押さえた教育の実施で、個々がハラスメントを意識した組織をつくる

ポイントを押さえた教育の実施で、個々がハラスメントを意識した組織をつくる

ハラスメント問題の現状

ハラスメントという言葉が日本で広まったきっかけは、1980年代日本で初めて裁判となった性的な嫌がらせを意味する「セクシャル・ハラスメント(セクハラ)」であると言われている。
その後、2000年に入ると、権力や地位の優位性を利用した嫌がらせを意味する「パワー・ハラスメント(パワハラ)」という言葉が生まれ、教育研究の場での権力を利用した「アカデミック・ハラスメント(アカハラ)」や妊婦・育児に関わる「マタニティー・ハラスメント(マタハラ)」などの言葉が続いて広まった。

2020年6月より「労働施策総合推進法」の改正によりパワー・ハラスメント防止対策が大企業では義務化、さらには2022年4月からは全企業で義務化され、各企業が少しずつ啓蒙活動にも力を入れ始める中、2020年10月に厚生労働省が実施したアンケート調査の結果ではセクシャル・ハラスメントの相談は4年前と比較しやや減少しているものの、パワー・ハラスメント、マタニティー・ハラスメント、また介護に関わるケアー・ハラスメントの相談件数は大きな変化を見せていない状況である。

企業が人的資本経営へとシフトしてく中、社員の働きがいを高める職場づくりを目指す企業にとっては、相談件数の削減も人的KPIの一つに含め、しっかりと対策を講じていくことが必要であると考えられる。

ハラスメントの定義を改めて理解する

ハラスメントの定義を改めて理解する

現状、ハラスメントの種類は増える中、管理者が部下や後輩に対する教育・指導を行う際のハラスメントとの境界線が不明確に感じ、正しい指導の方法がわからないといった相談も増えている。
ここで、改めて代表的なハラスメントの正しい定義や発生する職場の傾向を確認したい。

1.パワー・ハラスメント
職場におけるパワーハラスメントとは、同じ職場で働く者に対して、①職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、②業務上の適正な範囲を超えて、③精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為

2.セクシャル・ハラスメント
職場において行われる労働者の意に反する性的な言動により、労働者が労働条件について不利益を受けたり、就業環境が害される行為

3.マタニティー・ハラスメント
職場において行われる上司・同僚からの言動(妊娠・出産したこと、育児休業、介護休業等の利用に関する言動)により、妊娠・出産した女性労働者や育児休業・介護休業等を申出・取得した男女労働者の就業環境が害される行為

なお、これらのハラスメントが発生する職場の傾向としては、上司・部下のコミュニケーションが少ない、残業が多い・休暇が取りづらい、業績が低下・低調状態である、社員の年齢構成に偏りがある企業で発生していることが多いというデータがでている。
客観的に見ると、組織として一体化され難い構造となっており、また企業活動も苦戦を強いられている疲弊しきった状態の企業でハラスメントは特に引き起こされやすいと言い換えられるだろう。

ハラスメント予防・解決策の事例

ハラスメント予防・解決策の事例

事例1.中堅サービス業
①ハラスメントガイドラインの作成
自社におけるハラスメントの基準や該当例、防止指針を明記

②ヘルプラインの設置
男女別の相談窓口の開設、育児・介護専用相談窓口の開設

③相談事案の徹底対応
被害連鎖の防止に向けたヒアリング・対処の実施、相談者が諦めなくてもよい風土づくり

事例2.製造業
①啓発研修の実施
ハラスメント事例に基づいたディスカッションにより理解促進
ケーススタディーの活用によるハラスメント認識ズレの共有化

②風通しのよい職場づくり
世界人権デーに合わせた人権啓発リーフレットの配布、人権標語の作成(社内募集)

ハラスメント対策事例から学ぶハラスメント教育のポイント

ハラスメント対策事例から学ぶハラスメント教育のポイント

ハラスメント教育の実施を検討される企業においては、大きく分けて以下の2つのゴールを押さえて設計されることが効果的であるとお伝えする。

1.「ハラスメント」を自分が起こさないための基本を理解する

何気ない普段の行動が、ハラスメントとして訴えられることも多い。多様化する価値観の中で、自分の当たり前が他人の当たり前でないことは皆さんも一度は感じたことがあるかと思う。
ハラスメント対策の第一歩は、ハラスメントを自らが起こさないことであり、そのためにはハラスメントの正しい知識の理解が必要である。ハラスメントの定義、過去事例の理解をした上で、自身の普段の行動を振り返ることから始めていただきたい。
また、ハラスメント行動を起こさないために普段意識すべき職場基本行動など、より実践的な内容を含めることでさらに効果を見込むことができる。
なお、より効果的な対策としては、経営理念に沿った基本行動の浸透や、会社としてのハラスメントに対する明確な方針や目標を示すことである。理念や方針の上に自身のすべき基本行動を考えることで、会社全体でのハラスメント防止風土の醸成に繋がるのである。

2.ハラスメントが発生した時の適切な対応を理解する

ハラスメントが発生してしまった場合には、適切に速やかに対応することで、その広がりを防ぐことができる。
ハラスメントの相談を受けた場合、まず誰に何をすべきか、加害者・被害者への正しい行動を理解することが必要である。
研修内で特に意識して講じるべきことは、身体的な攻撃によるハラスメントの場合、精神的な攻撃によるハラスメントの場合など、類型別の詳細事例をもとにした具体的な事例を用いて理解を促進させることである。抽象的な講義や一般的な知識だけでは、実践的ではなくなり、全く意味がないことを理解いただきたい。
なお、企業としては対応策を講じるに先駆けて、相談窓口の開設やハラスメントを発見した時の基本相談経路を予め準備し、全社へ通知することもあわせて留意いただきたい。

なお、ハラスメント教育は専門的な知見を有する外部講師の活用、または自社内における担当者による講義が効果的である。

前にも述べたが、価値観の多様化はますます進むことが考えられる。環境の変化が激しいVUCA時代において、日本企業が持続的発展を遂げるためには、日本企業の強みである組織の一体化は必須であり、そのためにもハラスメントの発生は根絶したいものである。
上記の内容を取り入れた教育を含めて、会社全体でのハラスメントに対する取り組み、新入社員から役員まで全員が正しい理解と行動で、不要な心配することなく、笑顔溢れる職場づくりを実現されたい。

TCG REVIEW 企業内大学
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