人事課題解決ノウハウ

HRトレンド対談

2023年度のHRトレンドをテーマに対談を行った。

SCROLL

HRコンサルティング事業部
ゼネラルパートナー
浜西 健太
「幸せな会社づくり」をポリシーとし、組織・人事に関するプロフェッショナルとして多くのコンサルティングを展開。特に経営者(エグゼクティブ)向けのコーチングが高い評価を得ている。
浜西 前回のHR座談会が大好評でしたので、 その第二弾として今回は、2023年度のHRトレンドをテーマにお届けしていきたいと思います。皆さまよろしくお願いします。

山中
永易
よろしくお願いします。

浜西"HRトレンド"と一口で言いましても、我々はコンサルタントですので、単なる流行という意味ではなく、日々のコンサルティング活動を通して、来期に向けて各社の組織・人事に関するHR戦略を組み立てていくにあたり、明らかに潮流(時流)だと感じるテーマに絞ってお話をしていけたらと思っています。

色々あるHRトレンドの中でも 特に私が関心を持っているHRトレンドは、大きく4つです。

1つ目、コレクティブ ウェルビーイング
2つ目は、エイジダイバーシティ
3つ目は、EVP(employee value propositionの略)。日本語にすると社員体験価値ですね。
4つ目は、人的資本経営です。
いろんなダイバーシティがありますが、年齢のダイバーシティは明らかに考える頻度が 増えてきたと感じています。

この辺りを主なテーマとして掘り下げて行けたら良いと思います。
お二人はいかがでしょうか?

テーマ1:コレクティブ ウェルビーイングについて

HRコンサルティング事業部
チーフマネジャー
永易 杏菜
社員にとって働きやすい組織、長く働き、貢献できる組織づくりをテーマに、多くの中小・中堅企業向けの人事制度構築に従事。クライアント視点での丁寧なコンサルティングで信頼を得ている。また、セミナー・研修での指導・コーディネーターにも携わり、中堅・若手・新入社員の成長を支援している。 HRコンサルティング事業部
チーフマネジャー
山中 惠介
中堅総合ファッション企業の人事部門において、人事労務・採用・人材育成等を経験後、当社入社。現場での実務経験を活かした、クライアントに寄り添うコンサルティングを得意とする。社員が継続的に活躍・成長してゆく仕組みづくりを中心に人事分野で幅広く活躍中。
永易まず一つ目の、コレクティブ ウェルビーイングについてですが、これは非常に思うところがありますね。
ウェルビーイングが注目され、一般的になってきた2年ほど前は、単に社員個人の仕事やプライベートにおいて、また身体的にも精神的にも幸せであるかどうか、というところに注目されていた実感があります。最近は組織やチーム、そういった単位での幸せ、ウェルビーイングを考えていくケースが増えてきたなと感じます。

山中そうですね。私もコンサルティング現場を通じて感じています。これは昨今注目されてきたパーパス経営とも非常にリンクしてくると考えています。何のためにこの会社や組織・チームが機能しているのかを考えていくと、自ずとチーム単位でウェルビーイングについて考えていく方が本質的だと感じております。

浜西 ありがとうございます。日本語に直すと"コレクティブ"は集合とか集団と言われますが、いわゆる"集合的"ウェルビーイングという概念です。
永易さんがおっしゃってくれたように、2年ほど前からウェルビーイングという概念はあったのですが、新型コロナウイルスの流行によって考え方や捉え方がシフトしてきました。 単に一個人のワークライフバランスとか、ワークライフマネジメントのような範囲を指すウェルビーイングから、組織が組織である所以とか、何のためにこのチームが存在しているのか?何かの縁で一緒に働いている仲間たちと育んでいける共通の幸せって何なのか?こういうところを考えていけるかどうかを問われている気がしてなりません。

社会人人生や仕事をする時間は、ものすごく長いわけなので。その中で、もちろん個人が満たされていくって大事なのですが、一緒に集まったこの集合体である我々だからこそ追える幸せって何かなって、そういうところを考えていく。このような領域を組織やチーム単位で考えていくことに意味があると考えます。

ではほかのテーマについてはいかがでしょう?

テーマ2:エイジダイバーシティについて

山中2つ目はエイジダイバーシティについてですね。私自身、非常に多くの企業様のシニア活躍のための人事制度構築コンサルティングや、キャリア設計を担当させていただいているのですが、エイジダイバーシティについては、昨今の日本企業において取り組んでいく課題として非常にリアルなテーマであると捉えています。
例えば、ある大阪の会社では、年齢の多様性を大前提に、上司部下の関係性に固執せず、トレンドテーマによっては、年齢に関わらず上司と部下を逆転させて取り組んでいくケースが非常に増えていると感じています。

浜西なるほどですね。山中さんは今、シニア向けの人事制度の整備とか、65歳・70歳を見据えた定年延長制度やキャリアの整備とよく向き合っていますね。その中で、上司と部下の関係性が逆転するリバースメンタリングのようなことに向き合っている企業はやはり増えてきているということでしょうか?

山中そうですね、明らかに増えてきていると感じています。分かりやすいところでいうと例えば、DXやIT・デジタルの領域は、従来の上司が教育者、部下が受講者という関係ではなく、部下が教育者、上司が受講者ということもあり得るということです。これからますますこのような企業が増えていくと思います。

浜西できる人が教えていくことはごく自然な流れですね。そこに不要なプライドは要らないですよね。ありがとうございます。ほかのテーマはいかがでしょうか?

テーマ3:EVPについて

永易 来期、各社が考えるべきトレンドとしてはEVPも必須であると考えています。理由としては、生産年齢人口が減少しているという昨今の労働環境や、キャリアや雇用に対する価値観のシフトによって、社員一人ひとりがその組織の中で体験できる価値をどれだけ高めていけるのか、先ほどのウェルビーイングや、今後のエンゲージメントというところにも左右するのではないかと思います。

時間軸で見て行くと大変わかりやすいですが、在籍中だけが社員が体験できる価値ということではないかなと。入社前でも退職後・卒業後でも、体験できる価値というものはあるのではないでしょうか。アルムナイ制度は、その代表的な例かもしれませんね。

浜西アルムナイ制度、確かにそうですよね。
日本は腹切り文化みたいなものが残っていて、会社を辞めたら二度と戻ってこられない、下手したら退職者とは会うなっていう...時代錯誤な風習が今もなお根強く残ってしまっているのが実態としてあるのではないかなと思います。
どう考えても、先ほどおっしゃっていただいた生産年齢人口は、ここからの10年20年で1000万人単位が減っていくのが、目に見えて明らかです。出生率も下がっていますし、このような環境下で、どれだけ限りある人的資源に対して前向きに、細く長くつながりを持ち続けられるかっていうのもとても重要なポイントなんじゃないかなと思いますよね。
このあたり、山中さんどうですか?

山中そうですね。やはりその企業と個人の関わり方は見直している企業も多いかと思います。単純に言われたことをやっていくっていうことではなくて、社員自身がどういったところを深めたいのか、この企業において何を経験したいのかっていうところに着眼を置くことも大事でしょうね。

浜西そこはものすごく重要ですよね。永易さんがおっしゃったように、会社としては社員体験価値を時間軸で、入社前、在籍中、退職後・卒業後でしっかりと整備していくのですが、体験していく内容は、能動的に社員がどんなことを体験したいのかを洗い出して、しっかりとそれをキャリアに組み込んだり、制度の中に当てはめたりということが非常に重要だと思います。各社向き合っていく大事なポイントになるでしょうね。

ありがとうございます。
ここまでコレクティブウェルビーイングやエイジダイバーシティ、EVPというものに注目してきました。

最後は人的資本経営についてはいかがでしょう。

テーマ4:人的資本経営について

山中そうですね。人的資本経営は、どの企業も例外なく向き合っていく意味のある経営テーマであると考えます。もともと日本企業は人が最大の資産という考えの元、経営や経済の発展に向き合ってきたわけですが、改めて、長引くコロナ禍含めてVUCAの時代を生き抜いていくために、やはり個々の能力が企業にどう影響してくるのかということが非常に重要な要素となってくるというふうに考えています。人材の量だけではなくて、何が企業に良い影響を及ぼすのだというところの質を、改めて考えていく必要があると思っています。

永易 また、それを数値化していくことにも大変意味があるのではないかと思います。人事の領域は数値で測るというところがなかなか難しいことは当然あるのですけれども、取り組んだ内容をいかに定量的に落とし込むか、そして向き合えるか。その効果を検証できるかというところが大事なポイントだと思います。

浜西ありがとうございます。ちょうど先日、ある上場企業の社長とこの人的資本経営の話でディスカッションをしていたのですが、そこで、日本の資本主義は限界なのではないかと、単に、経済を生み出すことに価値があるという市場ではなく、人本主義(人が資本)なんじゃないか、そんな話をしていました。
元来、日本の会社は元々そういう気質を思っていたはずですよね。これが時代の変化とともに失われたのか、形が変わったのか...。改めてそのあたりをしっかりと一丁目一番地で向き合っていくということが重要なのだと感じます。

永易さんもおっしゃってくれましたけど、人事という領域は元々数値化しづらい側面が多いのですが、だからこそ、組織として押さえていく人事KPIのような代表指標を通して、 仮説と検証の効果測定をデータドリブンしていくことに価値があると思います。
我々自身も引き続き人的資本経営をあらゆる人事施策(人事制度設計、組織開発、教育)に対して当てはめていけると思います。

ということで、本日は2023年度のHRトレンドを題材にしてお話をしてきました。 やはり変えていけるものは変えていき、変えられないものは意図して変えない、我々はそういう見極めも必要なのだと改めて思いました。 各社、これから年末にかけて自社のHR戦略を再度見つめ直されるかと思います。 そういう機会になったら嬉しいですね。

本日は以上でございます。ありがとうございました。

ABOUT TANABE CONSULTINGタナベコンサルティンググループとは

タナベコンサルティンググループは「日本には企業を救う仕事が必要だ」という志を掲げた1957年の創業以来
66年間で大企業から中堅企業まで約200業種、17,000社以上に経営コンサルティングを実施してまいりました。
企業を救い、元気にする。私たちが皆さまに提供する価値と貫き通す流儀をお伝えします。

コンサルティング実績

  • 創業 66
  • 200 業種
  • 17,000 社以上