人事コラム
エンゲージメント

知っていると知らないとでは大違い!エンゲージメント経営実践事例

SCROLL

みなさんの会社は、離職や社員のモチベーションの低下に悩まされていないだろうか?
みなさんの社員は、自分らしく、イキイキと働いているだろうか?


実は、従業員に関する"あること"を知っているかどうかで、離職率や働く活力は大きく異なることが実証されている。


それは、エンゲージメントである。
近年よく取り上げられる言葉であるが、皆さんはその中身と効果について正しく理解しているだろうか。

エンゲージメントの効用

米Gallap社の2017年の調査(※1)では、従業員エンゲージメントの高い会社は低い会社と比べ、顧客からの評価・生産性が高く、離職率・品質上の欠陥が低い(少ない)ことがわかっている。


逆に言えば、エンゲージメントを軽視する企業はこういった「見えない損失」を出し続けていると言える。


実は日本でも、先進的な企業はこれに気づき様々な取組を行っており、すでに効果を上げているところもある。その中には中堅中小企業がそのまま真似できるものもあり、考え方が参考になるものもある。
そこで、先進企業が取り組んでいる取組について、その一部をご紹介したい。


なお、エンゲージメントに関する各用語の定義と詳細については別にコラムを作成しているので、そちらをご覧いただきたい。



※1 Gallup「Stats of Global Workplace2017」

先進事例の紹介

エンゲージメントを構成する要素である「仕事(ワーク)エンゲージメント」「組織エンゲージメント」に加え、弊社がエンゲージメントの源泉として特に重要視している「カルチャー」の3つの観点から、先進企業の取り組み内容をお伝えする。いずれの企業もエンゲージメント経営に取組むことで、業績や定着率、生産性や顧客からの評価などを高めることに成功しているため、ぜひ参考にいただきたい。

1.カルチャーフィットを高めるA社の理念浸透策

従業員がカルチャーに適合する度合いを「理念浸透」という取組で高めている企業の例として、機械メーカーA社を取り上げる。A社はその取り組みにより、従業員エンゲージメント指数を2016年の62ポイントから、2020年に76ポイントまで高めることに成功している。


ポイント1 理念に沿った行動を募集し、表彰(アワード)する


A社では、従業員が業務中に行った「理念に基づいた行動」を募集、その中から年間アワードを決めて表彰し、全社に共有している。

この取り組みの目的は、同社の理念である「事業を通じて社会的課題を解決することで、より良い社会を作ることを目指す」ということの具体例を示し、望ましい行動例を従業員に示す事で、理念浸透に一役買っているのだ。確かに理念に基づき日々の業務を行うという思想は正しいが、実際に日常業務でどう行動すればよいかを次々と挙げられる人は少ないだろう。 この取り組みにより、従業員が日ごろから「この仕事は理念実現に寄与するか」「理念に沿った行動になっているか」を自省するようになり、理念を体得するのに役立っている。


ポイント2 理念実現のためのタレントマネジメントシステム


A社では、理念実現に取り組むプロジェクトチームを作る目的で、従業員の能力・経験・志向を見える化したタレントマネジメントシステムを構築し、社員の成長実感・充実と適材配置の両立を目指している。

この取り組みの目的は、経営側としては、従業員一人一人の能力を活かすというものである。しかし従業員側の目線に立つと、異なる目的が見えてくる。プロジェクトで働くという事は、能力・経験・志向が異なる従業員同士が、普段の業務と異なるミッションを持って協働することになる。これはまさにチームメンバーの多様性を認め協働する事であり、理念である「より良い社会を作る」を、働く中で体感しているのだ。

2.仕事(ワーク)エンゲージメントを高めるB社の能力開発

仕事(ワーク)エンゲージメントを「従業員の能力開発」という形で高めている企業の例として、化学メーカーB社を取り上げる。B社はその取り組みにより、従業員エンゲージメント指数を2018年の31ポイント、2021年の34ポイントから、2025年に40ポイントまで高めることを目標に、着実に改善を行っている。


ポイント1 エンゲージメントにおける自社の強み・弱みを把握


B社では2018年に全社エンゲージメント調査を行い、強みは「安全」「権限移譲/自律性」にある反面、弱みは「学習機会および自己啓発」「キャリア機会」にあることが分かった。要は教え・学ぶ姿勢が弱いという事である。


ポイント2 弱みに向き合い、対策を打つ


弱みである「学習機会および自己啓発」に対しては、調査の2年後である2020年からオンライン学習システムをリリース。「キャリア機会」については、別の部署の上司との懇親会や社内インターンシップなど、普段は関係を持ちづらい部署との交流を図り、自身のキャリアについて新しい可能性を考える施策を行った。


B社の取り組みは「調査で自社の弱いところを特定し」「対策を打つ」を愚直に行っており、目を引くような華やかさは無いかもしれない。しかし、この「原因追及」「対策」を行っていない企業が実に多い。エンゲージメント調査を行うか、行わないかで1年、どのサーベイを使うかで半年、結果に対する対策の検討に半年。その間に感染症拡大で環境が変わったという事で、検討内容は白紙に戻る。そして今になって離職が再度増えてきた、という企業が多いのだ。B社のように自社の弱みを正しく素直に受け止め、対策を打つことで従業員のエンゲージメントが高まるのは当然ではないだろうか。

3.組織エンゲージメントを高めるC社の柔軟な勤務形態

組織エンゲージメントを「柔軟な働き方の実現」という形で高めている企業の例として、エンターテインメント業C社を取り上げる。C社のエンゲージメント指数は2018年の86ポイントと元々高いのだが、その取り組み等により2020年に88ポイント、2021年に89ポイントにまで高めることに成功している。


ポイント1 自由度を高める様々な勤務形態


2017年より働き方改革推進プロジェクトを実施し、ノー残業デーの実施や年次有給休暇の取得促進を行ってきた。その結果年次有給休暇が高い取得率となり、一般企業平均の11.3日に対し、C社全体では14.8日となっている。その他「フレックスタイム制」「裁量労働制」の導入により柔軟な勤務を可能にしている。 また2018年よりテレワーク制度の対象および利用可能日数を拡大し、新型コロナウイルス感染症を契機に、2020年からコアタイムなしのフレックスタイム制度を導入し、より勤務の自由度を高めた。


ポイント2 育児・介護・治療と仕事との両立を可能にする諸制度


C社の「両立支援制度」では、育児・介護・治療の3つを軸にしたサポートを行っている。20日間の有給休暇を付与する「育児休暇制度」、休職中の金銭面の支援をする「育児・介護休職支援金」、育児・不妊治療・介護・がん治療などの目的で取得できる「ライフ休暇」などの休暇制度があり、社員に広く活用されている。
また、子育てや不妊治療、介護、がん治療にあたる社員を対象に、「短時間勤務」や「年次有給休暇の時間単位使用」を設け、仕事との両立を可能にしている。


同社はそもそも「個性豊かな社員一人ひとりの成長の連鎖によって、その挑戦を最大限に発揮する場所である会社がさらなる成長を実現する」という考え方を持っており、可能な限り多様な個性・ライフステージに置かれている社員が自由闊達に働くことができるような制度を積極的に導入している。

まとめ

以上、先進企業の取組事例を紹介した。もちろん企業規模や文化風土の違いにより、すぐに真似できないものもあるだろう。確かに、施策だけを見るとそう感じるかもしれない。
自社でエンゲージメント経営を成功させるための最も重要なポイントは、自社に起きている課題の原因や背景を探り、それに対し従業員がどう思っているのかをはっきり測定し、一つ一つ対策を打つことである。


エンジゲージメント向上に対する投資を長々と検討するのは良策とは言えない。年間1名の離職を止めることができれば「年間1名の採用コスト」「採用した人が一人前になるまでの育成コスト」を無くすことができる。概算でもそのコストを計算すれば、エンゲージメント向上への投資は数年で回収でき、それ以降は実質的にリターンが出続けることがおわかりいただけるだろう。これ以上「見えない損失」を払い続ける必要はない。


これまでエンゲージメントに関する課題の点検を行ったことがなければ、すぐにでも実施することをお勧めする。その際は「調査して終わり」ではなく、原因・課題・解決策を一緒に提案してくれるパートナーを選定するとよいだろう。


御社がエンゲージメント経営のメリットに気づき業績向上につなげること、また従業員の皆様が幸せに働き続けられるよう祈念いたします。

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