2014.09.05

2014年5月21日、「ヘルスケアビジネス成長戦略研究会」は、総勢26人の会員の皆さんとともに、東北エリアでヘルスケアビジネスを展開
するファーストコールカンパニーを視察しました。今回の視察先は、

  • 株式会社水本〈総合生活産業〉様

株式会社水本:建設業から地域ワンストップ総合生活産業への転換

1927年創業の建設会社で今年88周年を迎えられる。今回は建設業からみごとに地域で総合生活産業になった株式会社水本をご紹介する。
岩手県の紫波郡矢巾町に本社があり、事業展開地域は本社周辺と盛岡市本宮の2地区。
盛岡市周辺地区の人口は419千人で岩手県の約3分の1の人たちが盛岡市周辺に住んでいる。

1998年当時は建設・不動産関連で全売上を占めていたものが、2013年までにグループ会社9社で、
建設・不動産業、介護事業、農業、保育、障がい者支援事業、温泉、アクアクララ(宅配水)の7つの事業を展開。
文字どおり総合生活産業への転換をされた。

株式会社水本グループ

同社は、1998年のピーク時で建設業売上が45億円で、内訳は土木が80%で公共工事が中心であったが、公共工事が減り始め民間に参入。
最初はマンションと住宅のFCに入り4~5年かけて仕組みを習得。今は自力で展開している。

なぜ、建設業オンリーであった同社が総合生活産業に転換できたのか?

それは建設業を実務で支えてきた同社専務の舘澤氏を中心とする現場監督たちの影の大変な努力があったからだ。
今、介護事業は、デイサービス4箇所定員105名、有料老人ホームは7施設140床、介護支援事業所2事業所(ケアマネージャー12名)、訪問介護事業所は2事業所(ヘルパー70名)で運営している。


建設業から異業種への取組ポイント

POINT :1.複合展開する事業のシナジー効果 2.現場代理人を施設長に抜擢する人材育成 3.キャッシュまで完全独立採算制

建設業としての「資源」「人材と土地」「周囲との信頼関係」がはっきりしており、事業コンセプトが明確であれば参入は可能である。
また第三者に頼まずに自分たちで行うことを実践してきた。

同社であげた問題としては、
・第三者に頼むと他力本願になる。
・事業はうまくいかないようにできている、他人に作ってもらった計画はさらにうまくいかない。
・壁に当たった際にどう改善すればよいか分からない。

・一番要になるのは、見積もりの依頼時に「毎月の返済額はいくらなら払えるか」を考えること。
・毎月10万円の返済額で15年間で返済するという返済計画の場合、いくらの借入れができるかを考える。
・建設会社に「5,000万円の建物ならやるので検討しててほしい」と言うと建設会社も考える。受身で行うと高い見積もりをもらう結果になる。
同社で実践したことは、
・自分たちで作ったものであれば問題に直面しても、解決に向けたヒントを探す事ができる。
・うまくいっているところを見ればヒントがあり、道筋を見つけられる。
・その道のプロにわざわざ飛び込んで教えて頂くことも必要である。
・舘澤専務は全国の介護事業のプロに細かなところまで教えを乞いに行き、それを施設長になる現場監督たちに教えていった。

・その道のプロで退職した人などに、1週間に1回手伝ってもらうのもよい。
・教育は、年6回介護職員研修、中堅幹部の研修を実施し、方針発表会は5/1、11/1の年2回で社員全員が集まり、グループ懇親会は年3回実施。
・若手の採用が来ないので、定年を過ぎても働く体力、気力のある人には働いてもらうようにしている。
・1日のシフトを午前と午後で分けるなど、高齢者でも肉体的に負担の少ないシフトにしている。

このような取組みを行い、異業種への展開を実現した。

多角化発展のポイントは単一事業収支のかけ算をすること

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会社を分社化しているので、社長、取締役、部長がそれぞれ責任を分担し、
自分たちの能力で出来ない事は行なわない。
グループ間でうまくいかないところは、意見を出し合って修正し実行する。

規模に関係なく年商5,000万円であっても、代表者となれば責任の持ち方、アイデアの出し方が違うため、苦戦する事業は何かを組み合わせることでマイナスとマイナスを掛けるとプラスになる。

農業はマイナス、障がい者雇用事業はマイナス、この2つをかけるとプラスになる。
単一事業収支が他の事業によって増え、相乗効果が生まれ、シナジーが生まれ、
世の中で困っていることで避けて通っていることを見つける。

さまざまなスタッフに経験、失敗させることによって自信とやる気とアイデアが出てきた。







今年は、子供と高齢者がいっしょに使える共生型福祉施設をオープンする予定で、今後ますます地域における同社の支援が深まり、なくてはならない会社になっていくであろう。



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舘澤専務にご講演いただいた。 施設を案内してくださる室岡取締役(元現場監督)

研究会チーフコーディネーターから「3つのキーワード」でまとめ

今回の視察・講話を通じて、ヘルスケアビジネス成長戦略研究会チーフコーディネーターである松室から、最後に3つのキーワードが提示された。

  1. 事業選びのポイント~顧客価値が明確である~
    本業とは事業成功の要因が異なる新規事業の立上げに成功されているが、その際の価値判断の軸は「顧客は喜ぶか?」である。
    すなわち、他社に先行して地域から必要とされる「コト」と自社とを上手く結びつけることが事業選びのポイントと言える。
  2. 事業を成功させるポイント~他力本願にならない~
    トップ自らが新規事業を立ち上げている。また、立ち上げる際には別法人で立ち上げている。要するに「出来たらいいな」では、
    新規事業など成功しないということである。事業は上手くいかないように出来ている以上、兼務や片手間などという発想は捨てた方が良い。
  3. 多角化を成功させるポイント~単一事業収支の掛け算~
    ヘルスケア分野は慢性的なマンパワー不足の業界である。採用よりも離職率低下に力点を置き、
    ダイバーシティマネジメントや職場環境向上に努めておられる。また、事業・施設単体での収支を確保すると同時に、
    他の事業が別事業の営業コストを下げる機能を果たしている。
    結果としてグループ全体の分岐点が下がるため、個別事業の収支も更に拡大するような仕組みとなっている。

今回の株式会社水本様は上記3点をきっちり押えているからこそ、建設業から介護に軸足を置いた総合生活産業に転換できたのではなかろうか?

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株式会社水本様

■創業:1927年(昭和2年)
■代表者:代表取締役 水本 慶
■従業員数:グループ全体235名(H26年4月現在)
■グループ会社9社
株式会社水本(建設業・アクアクララ<宅配水>)
株式会社エム不動産(不動産管理・福祉用具販売・貸与)
株式会社百万石(土木建築・機械・資材の総合リース)
株式会社不動温泉百万石(温泉事業)
株式会社プレーゴ(介護事業)
株式会社ケナフ(介護事業)
農業生産法人有限会社フォレスト百万石(農業・就労支援)
社会福祉法人いちご会(保育・障がい者グループホーム等)
株式会社ライト(飲食業)
■所在地:岩手県紫波郡矢巾町大字南矢幅6-72
■事業内容:建設・不動産、介護事業、温泉事業、保育、農業、障がい者雇用事業
■企業HP:http://www.mizu-moto.co.jp/campany/

次回の「ヘルスケア」研究会レポートは、岩手県の「株式会社三協医科器械」様

テーマは、「ヘルスケアビジネス市場での事業多角化戦略」

1947年創業の医療機器卸、株式会社三協医科器械様。
次回のレポートでは、事業としては医療機器卸一つであった会社がどのように多角化し、成功していったかの視察リポートを掲載する。

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