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今週のひとこと

経営者は常に自分の考え方を明示し、

全社員に徹底しよう。「自分の考え方」とは、

経営者の価値判断基準のことである。





☆ 本当の仕事と向き合う時間を確保しよう

皆さんは、"ただ忙しいだけ"の仕事をしていませんか?例えば、新たな顧客を創造するためのポジションにいる上司が日々の顧客対応に追われていたり、本来は部下に任せるべき仕事をしたりしている経営者などです。
こうしたことが起こる背景には、本当にやるべき仕事をやらない言い訳があると筆者は考えています。


では、本当の仕事とは何でしょうか。それは、目標に近づくための仕事です。例えば、マーケティング・営業チームであれば目標数字を達成するための顧客創造活動や、見込み客へのプレゼン資料の作成、内部スタッフチームであれば、生産性の向上につながるような業務効率化の施策の実施や、優秀な人材を獲得するための採用活動、経営者であれば、ビジョンや自身の想いを社員に伝える活動などです。

そして、本当の仕事を行うためには、綿密な計画と入念に思考する時間の確保が不可欠です。目の前の仕事に対処し、忙しさを感じることは心地良いかもしれません。しかし、それは"ただ忙しいだけ"である可能性が高く、自社の発展には繋がりません。

毎日少しの時間でも構いません(1日20分でも、1週間で2時間以上確保できます)。チームそして、個人の真の目標の達成に向けて、本当の仕事に向き合う時間を確保していただきたい。

コンサルティング戦略本部
コンサルタント
濱田 崇宏





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育成型人事システムが最大の競争力となる時代


事業推進を支える経営システムの1つに人事システムがある。人事システムが存在しない企業は少ないが、うまく機能している企業も少ない。中堅企業の人事システムを見て感じる課題は、かつて成果主義へと傾いた名残で、「チームや部下を育てる」というバックボーンを明確に示せていない点だ。人事システムが社員のモチベーションアップにつながっていないケースが多いのである。

この状態が続けば、人事システムを運用していても社風は荒れてしまう。なぜなら成果偏重の評価制度のもとでは、「自分の成績さえ良ければよい」「育てた部下が自分より実績を上げたら具合が悪い」と考える社員が増えてくるからだ。これでは、いくら有望な事業の種をまいても、うまく芽が育たない。実際、ある中堅企業では、人事システムの運用面で多くの誤解が発生し、事業推進のブレーキになってしまっている。

どのような事業戦略も、人材の成長なくして実現はない。特に採用難が続く現在の経営環境においては、現メンバーを最大限に活用することが、会社の競争力アップにつながる。そこで、現状の人事システムを見直すコンセプトとして、「育成型人事システム」を提言する。キーワードは「育てる」と「働きがい」の2つである。

「育てる」とは、「育たないのは本人の能力や意識、努力が足りないからだ」と考えるのではなく、「能力や意識に不足があっても、会社の仕組みを活用して育てていく」という考え方をベースに、人事システムを設計することだ。ある企業は、「2‐6‐2の法則(※)」における不活性タイプの階層に対して自己承認型の育成プログラムを導入し、成果を上げている。全ての人材を活性化して最大限に生かす発想であり、「長所連結主義」による育成アプローチである。
※ どのような組織でも、2割が活性タイプ、6割が一般タイプ、2割が不活性タイプになりやすいという法則。「働きアリの法則」ともいわれる

「働きがい」は、個人によって異なるだけに、非常にデリケートなものである。業績や対人関係の悪化、社内制度の変更などをきっかけに、簡単にあるべき姿が失われてしまう。しかし、ひとたび社員が働きがいを感じれば、その能力の総和で会社のエネルギーは最大限にまで高まる。働きがいのある企業とは、「社員が会社や経営者・管理者を信頼し、自分の仕事に誇りを持ち、一緒に働いている人たちと連帯感を持てる会社」といえよう。

「育てる」と「働きがい」というキーワードから自社の人事システムを点検し、競争力を高める育成型人事システムを構築していただきたい。


■筆者プロフィール

タナベ経営
コンサルティング戦略本部 中四国支社長
松本 順行 Noriyuki Matsumoto
「顧客価値を高めて利益が出なければ誰も幸せになれない」を信条に、厳しくも楽しく業績を追っていくことを基本とし、数多くの企業を再建した実績を持つ、タナベ経営のトップコンサルタントの1人。現在、ビジネスモデルを研究テーマとしており、事業・組織・収益の視点から企業の進化に必要な戦略要素をデザインし、実行・推進していくことを得意とする。





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「クオリティーNo.1」を掲げ
人間性を磨く人材育成に打ち込む



栗林石油 代表取締役社長 栗林 昌弘 氏

経営方針を大転換し増販増益を実現する

少子化やハイブリッド車の増加などから、石油・ガソリンの小売市場は縮小傾向にある。そうした中、8年にわたって「増販増益」を続けている栗林石油(北海道札幌市)は稀有(けう)な存在だ。

同社の事業の大きな柱は、北海道内に19のサービスステーション(以降、SS)を展開するSS事業と、一般家庭への灯油の配達、法人向けに重・軽油、潤滑油などを提供する販売事業である。この2つの柱を中心に、業績を伸ばしている。

しかし、現在に至るまで同社の経営は順風満帆だったわけではない。代表取締役社長の栗林昌弘氏はこう振り返る。

「社長に就任した2005年は、借入金が膨らみ苦しい経営状況でした。こうした状況を招いた原因は売掛金の長い回収サイト。そこで、回収サイトを短くして財務の健全化を図ることにしました。新しい回収サイトで入金ができないお客さまとは取引をやめて、新規のお客さまを創造していく方針に切り替えました」

スローガンを打ち出しサービス強化に取り組む

栗林氏は新規顧客開拓という方針とともにスローガンも打ち出した。それが「クオリティーNo.1を目指して」である。石油やガソリンを販売する企業ではなく、品質の高いサービスを提供する企業であることを社内に周知するためのスローガンであり、接客力強化をうたったものだ。

しかし、スローガンを掲げただけでは、その戦略を従業員が理解できない。そこで栗林氏は率先してSSに出向いて、洗車や窓拭きを行った。今でもSSのリニューアルオープンの際には、自らカエルの着ぐるみを着て来店客を出迎えているという。

「正直、驚きました。社長がそこまでするのかと(笑)。でも、その時から社内の空気は一変しました。顧客に喜んでいただける接客を指すクオリティーNo.1を、社長がいかに本気で目指しているか、アルバイトを含めた従業員が肌で感じたのです」

そう述懐するのは取締役SS統括本部長の赤塚篤志氏である。その頃から、全国でクオリティーNo.1になるため何をすべきかを、従業員一人一人が考えながら仕事に臨むようになったという。そうした変化に伴い、業績も改善していった。

栗林石油 常務取締役 営業統括本部長 高橋 一博 氏
栗林石油 常務取締役 営業統括本部長
高橋 一博 氏

「人間性」を重視した人材育成で成果を上げる

接客力を強化するには何が必要か?常務取締役で営業統括本部長の高橋一博氏は「人間性」だと即答する。栗林石油の人材育成の基本がそこにある。

「売り上げを伸ばすことよりも、従業員の人間性を磨くことを大切にしています。長いスパンで考え、『笑顔』『感謝』『気配り』をモットーに、サービスのクオリティーを上げる。それが当社の人材育成に対する考え方です」

しかし、従業員に接客力を高めたいという気持ちがあっても、高いスキルはなかなか身に付かないと高橋氏は言う。そこで同社は、社外セミナーへ積極的に従業員を派遣している。

タナベ経営の「幹部候補生スクール」には2012年から毎年、従業員を送り出している。さらに「中堅リーダー革新セミナー」「営業突破力強化セミナー」など複数のセミナーも活用。その結果、参加した従業員たちには、論理的かつ広い視野から物事を捉える力が備わった。

特に変わったのは、部下との向き合い方だ。それまで部下への指導も「言ったら終わり」という姿勢だったが、「伝えたことを理解しているか?」という視点からコミュニケーションを図るようになった。

「さらにタナベ経営とともに、上司と部下の意思疎通を深めるための評価制度も導入しました。上司・部下の面談機会を設けて、適正なコミュニケーションが図れているのかを確認し、その内容を評価しています」(赤塚氏)

この制度によって組織内のコミュニケーションがさらに深まった。その現場力の高さは、全国に約1万店あるENEOS(エネオス)のSSを対象に行われた顧客満足度の覆面調査において、第1位を3度も獲得している点からうかがえる。

「クオリティーNo.1を目指して」というスローガンのもと、同社の躍進は続く。

栗林石油 取締役 SS 統括本部長 赤塚 篤志 氏
栗林石油 取締役 SS 統括本部長
赤塚 篤志 氏

PROFILE

  • 栗林石油株式会社
  • 所在地: 〒060-0003 北海道札幌市中央区北3条西12-2-4
  • TEL: 011-241-1411
  • 設立: 1961年
  • 資本金: 7500万円
  • 売上高: 150億円(2016年3月期)
  • 従業員数: 110名(2016年3月現在)
  • http://www.kurinet.co.jp/kuriseki/


タナベ コンサルタントEYE

「うちの社長は、本気でクオリティーNo.1を目指している」。その本気度がアルバイトを含む全従業員に伝わった瞬間こそ、栗林石油が本当の意味で変化するターニングポイントだった。栗林氏自らが率先して顧客満足度向上へ取り組む姿に、心を打たれた従業員は多かったであろう。企業は人でできている。縮小マーケットであっても、熱意と信念を持って従業員一人一人と向き合えば、会社を成長させられる。それを同社は証明したのである。
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    担当:タナベコンサルティング 戦略総合研究所