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今週のひとこと

企業は環境適応業。
経営者は先を見る目、市場を見る目、
己を知る目が必要だ。

☆ 世界の人々が、「今」求めている商品やサービスが見えてくる

 筆者は今、海外戦略に関するコンサルティングを行う機会が多く、そのテーマは、販売や生産、開発、事業計画の策定・実行など多岐にわたります。
 様々なクライアントの支援を通じて共通して感じるのは、世界全体の動きは日本よりも格段に早いということです。発展途上にある国々は抱える課題を解決することが、そのまま成長へとつながります。当然かもしれませんが、変化と成長のスピードは、成熟した国々よりも格段に早く、一年前と現在の姿を比べると、まるで違っていることも珍しくありません。それは経済面の活動だけではなく、政治や文化、人々の考え方に至るまで大きく変化しています。

 また、発展途上国の成長は、周辺国との交流や、人材の移動、文化の発信を通じて先進国へも大きな影響を与えているように感じます。
 「日本人は世界一勤勉な国民だ」と言う日本人は、少なからずいますが、海外の動きを知り、ビジネスをして、友人を持てば、そのようなことはまるで根拠のないことであり、日本人よりもよく働く国の人々は数多くいることに気づきます。

 世界には多くのビジネスチャンスが存在しています。そしてそれは、日本国内だけに留まっていてはとても得られないほどの大きな可能性を秘めたものです。もし、偏見を持って世界を見ていると、大きなビジネスチャンスを逃してしまうことになるでしょう。
 海外展開をする際に重要なのは、偏見や先入観にとらわれることなく、「今」の世界を見つめることです。そして、そうすることで初めて、世界の人々が「今」求めている商品やサービスが見えてくるのではないでしょうか。

経営コンサルティング本部
チーフコンサルタント
市川 淳

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企業ブランドの陳腐化を防ぐ「リ・ブランディング」の着眼

ブランドを陳腐化させないためには

「ポスト2020」に予測される需要減と過当競争に備えるため、いまやブランディングは企業の必須課題となっている。自社を「価格ではなく、"価値"で選ばれる」企業体質にしておかなければ、将来的に生き残っていくことさえ難しい。

中堅企業や老舗企業の場合は、すでにブランドとして確立し、認知されているケースも多い。ただ、注意しなければならないのは、ブランドは放っておくと劣化していき、やがては陳腐化していくことだ。長年にわたりブランド力を維持していくことは、実は難しい。それをいかに磨いていくかが当面の重点になるだろう。

ブランドは劣化していくと、顧客が離れてリピート率は下がり、価格競争に巻き込まれ、付加価値も目減りしていく。やがて生産性が落ちて社員も辞めていくという悪循環に陥る。そこに歯止めをかけることは、企業の競争戦略上からも外せないテーマだ。

そこで、ブランドを維持・管理していくための取り組みを【図表1】に示した。

大きくは「顧客の期待を裏切らないこと」、「ブランドを浪費しないこと」、「ブランドを腐らせないこと」の3点に集約される。

顧客からの信頼を裏切らないためには、製品やサービスの品質管理はもちろん、顧客との接点である接客対応でも満足度を高めなくてはならない。社内ルールやマネジメントの仕組みも必要であり、品質基準や検査などのマニュアルを作成・共有して、厳格に運用していくべきだろう。

また、むやみに製品・サービスを増やすとブランドイメージが散乱する。例えば、価格のラインアップが多過ぎれば、ブランドとしての価値を維持できない。高級ブランドが低価格商品を出さないのは、そのためである。

積極的な新商品開発や新しい顧客へのアプローチもポイントの1つだ。変わらないことも大事だが、あえて変えていくことも必要になる。

例えば、「アサヒ」「キリン」といえばビール業界の大ブランドだが、「スーパードライ」(アサヒビール)や「一番搾り」(キリンビール)がなかったら、両社のブランド力は陳腐化していたかもしれない。顧客の潜在ニーズをつかむ努力と、研究開発で新たな技術を磨いていくことが、ブランドの新鮮さを保持することになる。


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「リ・ブランディング」を推進する

ブランドにはライフサイクルがあり、気が付かないうちに「老化」している場合もある。老化の症状は陳腐化よりも深刻で、より抜本的な改革が迫られる。自社ブランドのライフサイクルを検証し、もし老化の段階に入っている場合は、「リ・ブランディング」によってブランドをリニューアルする必要がある。

【図表2】にリ・ブランディングを推進していくための着眼を示した。「ターゲットの再設定」、「ブランドバリューの開発」、「インナーブランディングの徹底」の3つである。

老化の兆候は、ブランドがターゲットにしている顧客層に表れる。例えば、顧客の年齢層が50代や60代ばかりだと、時間とともに顧客は確実に減っていくだろう。その場合、20代や30代の若い世代をターゲットとして再設定する必要がある。

また、ブランドのターゲットを変える場合は、それに合わせてやり方も変えなくてはならない。若年層を狙っていく際は、その層が"ミレニアル"と呼ばれる1980~2000年代初頭に生まれた世代で、「デジタルネイティブ」であることを念頭に置くべきだ。今の50代や60代とは、価値観や行動様式がまるで違うからである。

生まれた時からパソコンなどのデジタル機器がある環境で育っており、スマートフォンやSNSでのコミュニケーションが当たり前になっている。消費では「モノよりも体験」を重視し、「何を買うか」よりも「なぜ買うか」に判断基準を置いている。そうしたターゲットの特性に合わせたブランディング戦略をとることになる。

また、ミレニアル世代へ新たなブランドコンセプトを訴えるためには、映像が効果的な手段になる。特に、YouTubeやInstagramが情報共有の場として知られている。

BtoB企業においても考え方は同様である。主要顧客の業界が偏っており、それがもし衰退マーケットだとしたら、将来的には顧客が消滅しかねない。その場合はターゲット自体を変えていくべきであり、将来性が見込める成長分野の顧客へシフトしていくことになる。医療・福祉などのヘルスケア分野、環境・新エネルギー分野、ロボット・IoT・AIなどの先端テクノロジー分野など、自社のブランドコンセプトとの接点を探っていくことだ。

また、製品価値よりもサービス価値に重きを置いて、自社の固有技術を成長分野で生かせるように、ブランド価値自体を再設計・再開発していくことも必要になる。

社員も古い慣習や従来の価値観を捨て、新しい分野にチャレンジしていく意識改革が求められる。ブランドのターゲットや提供価値がいくら新しくなっても、社員が旧態依然とした考え方では、いずれメッキが剝がれてしまう。

新たなブランドコンセプトに基づく階層別研修、ブランドブックの作成、社内広報による定期的な情報発信など、インナーブランディング(社員に対しブランドの価値や目指す姿を理解させる啓蒙活動)を推進していく。もし変わらなければ、それにふさわしい人材を中途採用することも組織のカンフル剤になる。

ブランドを進化させることで、社員も成長していくことが理想的な姿だ。それを導くのが経営トップの役割である。そのため、トップにはインナーブランディングで妥協しない決意と覚悟が求められる。ぜひ、リ・ブランディングの実現に向けて、リーダーシップを発揮していただきたい。

タナベ経営 経営コンサルティング本部 副本部長 平井 克幸
  • タナベ経営
  • 経営コンサルティング本部 副本部長
  • 平井 克幸
  • Katsuyuki Hirai
  • 経営者の参謀として、企業のさまざまな課題に精通する戦略コンサルタント。専門分野はブランディングをはじめ開発・マーケティングなど多岐にわたり、これまでに中堅・中小企業の成長支援を数多く手掛けてきた。著書に『タナベ流新規事業開発プログラム』(タナベ経営)がある。中小企業診断士。

ブランディングに関わるコンテンツ

ブランディングノウハウセミナー

第一線のブランドマネージャーに最新のノウハウを学ぶ!

ポスト2020を間近に控え、企業におけるブランドの必要性が高まっています。ブランディングに取り組む際は、具体的に何をどのように実践するかが大事。そこで今回、企業の第一線で活躍しているブランドマネージャーを講師に招き、現場での成功事例をもとにブランディングの実務に役立つノウハウを学びます。

講演企業:・株式会社スープストックトーキョー ・オイシックス・ラ・大地株式会社 ・株式会社 明治

「ブランディングノウハウセミナー」の詳細はこちら

ブランディング海外視察セミナー

「Made in Italy」に学ぶ
中堅・中小企業×地方創生のブランディング

「Made in Italy」のブランド力を支えるのは、それらの産地に点在する地場の中小企業に他なりません。日本の中堅・中小企業が参考になるのは、このようなイタリア方式のブランディングであり、それが本企画の趣旨です。
またイタリアの企業ではデザイナーの存在価値が高く、デザインによってモノに意味を与えることが経営の根幹にあります。そうした中で生まれる製品や建築物などのデザインセンスは、現地を訪れるだけでも感性を刺激する何かが得られるはずです。

「ブランディング海外視察セミナー」の詳細はこちら

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「お客さま、取引先、自社」を笑顔でつなぎ100年企業へ

明るく、広々とした福祉用具の ショールーム「セレクションスペース笑顔」
明るく、広々とした福祉用具の ショールーム「セレクションスペース笑顔」

地域に根差し、医療機関から厚い信頼を集める三笑堂。
2019年に創業90周年を控える同社は、社員のチャレンジ精神を引き出す「笑顔」経営で、医療機器卸を中心にバイオ、介護、ジェネリック医薬品へと事業領域を拡大している。


創業90年を迎える医療機器卸

藁田 京都市に本社を置く三笑堂は、医療機器卸業を中心に地域密着型の事業を続けておられます。私は以前から、三笑堂は良い社名だと思っていました。「笑」の字が入っている社名は珍しいですね。

上田 1929年、京都の医療器械店ででっち奉公していた祖父・上田新次が19歳で独立し、医療機器を扱う「いわしや上田医科器械店」を開きました。京都・伏見の開業医を中心に商売が広がっていく中、1935年に上田三笑堂へ社名を変更。お客さま、お取引先さま、そして私たちの三者が笑顔でつながろうという思いが込められています。

藁田 自社だけでなく周囲も笑顔にする商売。それを社名にするとは素晴らしいですね。これまで京都から関西一円へと事業エリアを広げる一方、事業領域の多角化にも取り組まれてきました。

上田 成長過程で新しいチャレンジを続けてきたことが今日につながっています。現在はさまざまな事業部がある中で大きく分けて医療、介護、バイオ、医薬品事業の4本の柱があり、介護は福祉用具の販売やレンタル、住宅改修などを手掛けています。バイオは大学や企業の研究を分析機器や研究用試薬などの側面からサポートしており、最近は京都大学の山中伸弥教授のiPS細胞分野の研究も支援させていただいています。

また、医薬品はジェネリック医薬品を取り扱っています。新しい分野ですからさまざまな壁がありましたが、社員が頑張ってくれたおかげでなんとか軌道に乗りました。それぞれの部署で、社員が責任と自覚を持って取り組んでくれています。

藁田 特に、慢性疾患を抱える患者にとって、ジェネリック医薬品は経済的な負担を軽減するメリットの高い選択肢です。国の医療費削減にもつながる事業ですが、新事業の立ち上げは簡単なことではありません。社員が果敢に挑戦する背景としては、経営理念の存在が大きいのではないでしょうか。

上田 当社の経営理念は、「SPEED and HEART」「BEST for SMALL」「ENJOY and THINKING」。特に、創業当時からスピードを重視してきました。当初、小規模なクリニック向けに商売を始めましたが、たとえスリッパ1足でも注文があればすぐに届けるよう徹底していました。また、ささいなことでもお客さまからご質問やご要望があれば、とにかく速く・丁寧に・正確に対応してきた積み重ねによって商売が広がっていきました。加えて、仕事は面白くないといけません。社員がやりがいを持って働くことが大事です。

藁田 働く環境も工夫されています。本社のエントランスに入った際に音楽が流れているので心が安らぎます。

上田 営業から帰ってきた社員が音楽を聴くと心が和むのではないかと。以前はピアノの自動演奏でしたが部品がなくなってしまい、いまはやむなくCDで音楽を流しています。

土手 正月やクリスマスなど季節に合わせて曲を変えたり、エントランスの飾り付けをしたりと、社員が季節を感じられるように工夫していますね。私が新卒で入社した当時から面白い会社で、とにかく元気がありました。

代表取締役社長 土手 克己氏1981 年入社。大学卒業後、営業畑で 1997 年大阪支店長を経て営業本部長。常務・専務取締役を経て 2007 年代表取締役社長に就任。
三笑堂 代表取締役会長 上田 勝康氏
大学卒業後、東京の病院にて研究助手、医局秘書として1年間勤務後、1989年入社。三笑堂のあらゆる部署(総務、専門営業、理化学など)を経験し、2013年代表取締役会長に就任。

挑戦できる環境で働きがいのある会社へ

岡田 御社へ訪問した際、いつも「元気がいいな」と感じています。昨今は働き方改革が叫ばれていますが、社員の皆さんがイキイキと仕事をされている姿が印象的です。

土手 当社においても、働き方改革として、「かえるプロジェクト」を立ち上げて取り組んでいます。働きやすい会社も良いのですが、目指しているのは「働きがい」のある会社。プロジェクト名のかえるには、「意識を変える」「仕事を変える」「早く帰る」「笑顔に変える」を掛けています。中でも、一番大事なのは意識を変えること。上司が「早く帰れ」と言うだけでは、働き方は変えられません。

岡田 意識改革は一番難しいところです。スローガンを掲げるだけでは、なかなか習慣を変えることはできません。

上田 上が率先する意味で、プロジェクトメンバーから「会長と社長、専務にかえるの着ぐるみをかぶってほしい」とリクエストがありました(笑)。

岡田 面白いですね。かぶられたのですか?

上田 はい。2017年は88周年の記念事業として、夕方から京都水族館を貸し切って納涼会を開催しました。その際、私と社長、専務がかえるの着ぐるみをかぶり、招待したお客さまや社員の前であいさつしたところ、大変喜んでいただきました(笑)。

岡田 納涼会が盛り上がったでしょうね。三笑堂では毎年のお花見会など社内イベントも盛んですし、プロジェクトを通した社員交流の場を多く設けておられます。社員教育の面では資格取得を積極的にサポートしておられますね。

上田 この業界はさまざまな資格が必要ですが、何に挑戦するかは社員に決めてもらっています。資格の受験費用については合格すれば会社が全額負担します。ただし、資格がどのように会社の役に立つのかを上司に説明し、認められることが条件。医薬品や介護の資格取得が多いですが、1級建築士や税理士、臨床工学技士の免許を持っている社員もいます。

藁田 多様な人財が育てば事業の幅が広がっていきます。社員が自主的に挑戦するわけですから、モチベーションも上がるはずです。

上田 他にも自主申告制度や社内公募制度があります。自主申告制度は勤務地や職種などの変更を社員が希望できるもの。社内公募は、各部署が希望する人財像を提示して募集し、挑戦したい社員が手を挙げる制度です。また、個人面談でキャリアアップに向けたすり合わせをしたり、職場環境調査のアンケートを実施したりしています。

藁田 採用難が続いていますし、今後は少子化の影響で人財の確保が企業にとって大きな課題となるでしょう。今後、社員教育において注力していきたい部分はありますか?

上田 ミドルクラスの教育に力を入れようと思っています。女性社員の役職への登用など、多様な人財が活躍できるように制度も整えていかなくてはなりません。また、ベテラン社員を延長雇用することで、若手社員へのノウハウ継承と育成に当たってほしいと期待しています。

藁田 中間層の成長は、会社の成長に大きく影響を及ぼす部分です。理念の継承についてはどのように取り組んでおられますか?

上田 新入社員には、哲学や心の持ち方、笑顔を大事にする理由などを社内研修などの場で何度も伝えています。ですが、理念を共有するには中間管理職がきちんとDNAを受け継いでいることが重要。その意味でもミドルクラスの教育が必要だと考えています。

タナベ経営 取締役 藁田 勝立 命館大学大学院修了(経営学修士)。金融機関勤務を経て、2000 年にタナベ経営に入社、 2014 年より現職。志の高い経営者とともに理想を追い続けるコンサルティングの実践が信条。赤字企業の再建から成長戦略の構築まで数多くの実績を誇る。
代表取締役社長 土手 克己氏
1981年入社。大学卒業後、営業畑で1997年大阪支店長を経て営業本部長。常務・専務取締役を経て2007 年代表取締役社長に就任。

地域で選ばれるナンバーワン企業を目指して

藁田 後継者不足や統廃合によって病院数は減っており、医療業界では今後、競争激化が避けられない状況です。同業種には全国展開によって競争力向上を図っている企業もありますが、今後はどのように差別化を図っていかれますか?

土手 規模の拡大よりも、サービスの質を上げていくことを追求します。それぞれの地域でしっかりとシェアや顧客満足度を深め、たとえ人口が減少しても、地域の方々のために商品・サービスをきちんと届けることが使命だと考えています。

上田 当社が顧客に選ばれてきた理由は、社員の人となり。誠実さやレスポンスのスピード、丁寧さなどは、これからも大事にしていきたい部分です。いかに付加価値を付けられるかが、当社の商売の醍醐味です。

藁田 三笑堂が選ばれるためにはモノだけではなく、ソリューションを提供することがますます重要になっていきます。

上田 特に人財不足は病院でも深刻ですから、これまでの開業支援に加えて継承支援をお手伝いする機会が増えています。こうしたニーズは今後も高まっていくでしょう。人やサービス、コンサルティング、ソリューションは他社がまねできない部分であり、力を入れて取り組んでいるところです。

藁田 介護サービスにおいてもコンサルティングやソリューションといった視点が欠かせません。

土手 在宅介護の現場に関わっていると、商品やサービスを選ぶお客さまが受け身になっている状況を目にします。例えば、つえや歩行器にはさまざまな種類がありますが、お客さまは商品の種類や安全性、購入できる店についてあまりご存じない。なぜなら、そういった情報が不足しているからです。

岡田 現状は、ケアマネージャーや同行する福祉機器代理店のすすめで購入しているのがほとんどです。実際に使用するお客さまにとって選択肢は非常に少ないですね。

土手 使うご本人にゆっくりと選んでいただきたいとの思いから、在宅介護に必要となる福祉用具を取りそろえたショールーム「セレクションスペース笑顔」を2013年1月23日にオープンしました。実際に体験していただけますから、気に入ったデザインや身体に合った製品を選ぶことができます。一般に、福祉器具の店舗は狭くて商品を詰め込んだイメージもありますが、当社のショールームは明るくて広々としていることが自慢。広さは日本一ではないでしょうか。

岡田 ショールームは広くて種類も豊富ですから、ゆっくりと選ぶことができそうです。気に入ったつえや歩行器があれば、お客さまの笑顔が増えそうですね。

上田 今のシルバー世代は、ケアマネージャーや家族が選んできたものでは満足しません。自分の好きな靴やつえを選んでいただいて、どんどん外出していただきたい。在宅介護を受けている方はどうしても外出がおっくうになりがちになってしまいますが、自分で選んだ靴やつえだったら散歩に行ってみようかなという気持ちになるはず。そういった前向きな気持ちを後押ししていきたいと考えています。

藁田 今や人生100年時代。たとえ介護が必要になっても快適に暮らしていける環境の実現は、社会的課題でもあります。

タナベ経営 経営コンサルティング本部 コンサルタント 岡田 牧子 大手製造業の営業を経て、タナベ経営に入社。「現場重視、現場改善」を信条とし、事業戦略立案から事業モデル構築、営業力強化、営業人材育成に数多くの実績を持つ。現場と一体となった取り組みは、社内外から高く評価されている。ヘルスケアビジネス成長戦略研究会担当。
タナベ経営 取締役 藁田 勝
立命館大学大学院修了(経営学修士)。金融機関勤務を経て、2000年にタナベ経営に入社、2014年より現職。志の高い経営者とともに理想を追い続けるコンサルティングの実践が信条。赤字企業の再建から成長戦略の構築まで数多くの実績を誇る。

新たな挑戦なくして生き残ることはできない

会議や研修などを行う本社 8 階の会議スペース。ほかに、本社と隣接する場所に広々とした「上田ホール」があり、セミナーや展示会会場として活用
会議や研修などを行う本社8階の会議スペース。ほかに、本社と隣接する場所に広々とした「上田ホール」があり、セミナーや展示会会場として活用

藁田 医療分野はいま、大きな転換期を迎えています。今後の展開として重視されている分野などはありますか?

上田 医療事業については、ロボットやAIが医療や介護に入ってきていますから、今後はレントゲンやCT(コンピューター断層撮影装置)、MRI(磁気共鳴画像装置)といったハードだけでなく、ソフトやシステムに注力していくことが不可欠だと考えています。ただ、新規事業については「医療にこだわらなくてもいい」と若手社員に言っています。

藁田 自由な発想を期待されているわけですね。

土手 ショールームも、運営は若手社員に任せています。私や会長からは「日本一のショールーム」といった抽象的なコンセプトだけを伝えて任せたところ、私たちでは及ばない素晴らしい発想が出てきています。また、中国人観光客が20人ほどショールームに来られたことがありました。聞けば、京都駅の観光案内所で当社のショールームのことを知ったとのこと。この経験から、社員が自主的に中国語のパンフレットを作って配布するなど、能動的に動いてくれています。

上田 観光業界ともコラボレーションしてみたいと思っていましたから、早速、プロジェクトを立ち上げて取り組んでいるところです。10代の記憶力、20代の発想力、30代以降の決断力が大事。その3つともないのは「みっ(3つ)ともない」と社員に話しています。いまは目まぐるしくビジネス環境が変わる時代ですから、頭を柔らかくして異業種とのコラボレーションに挑戦していかないと生き残っていけません。挑戦してみてダメだったらやめたらいい。まずは挑戦してみることが大切だと思っています。いかに変化に対応するかが生き残る秘訣ですから。

藁田 「伝統と革新」とよくいわれますが、「革新という伝統」があるから続いているとも考えられます。革新を繰り返しているうちに伝統になる。それが老舗なのだと強く感じます。挑戦を続ける三笑堂が社会的課題の解決によってお客さま、取引先、自社を笑顔でつなぎ、100周年に向け、その輪がより大きく広がっていくことを祈念しております。本日はありがとうございました。

タナベ経営 経営コンサルティング本部 コンサルタント 岡田 牧子 大手製造業の営業を経て、タナベ経営に入社。「現場重視、現場改善」を信条とし、事業戦略立案から事業モデル構築、営業力強化、営業人材育成に数多くの実績を持つ。現場と一体となった取り組みは、社内外から高く評価されている。ヘルスケアビジネス成長戦略研究会担当。
タナベ経営 経営コンサルティング本部 コンサルタント 岡田 牧子
大手製造業の営業を経て、タナベ経営に入社。「現場重視、現場改善」を信条とし、事業戦略立案から事業モデル構築、営業力強化、営業人材育成に数多くの実績を持つ。現場と一体となった取り組みは、社内外から高く評価されている。ヘルスケアビジネス成長戦略研究会担当。

PROFILE

  • ㈱三笑堂
  • 所在地:〒601-8533 京都府京都市南区上鳥羽大物町68
  • TEL:075-681-5131(代)
  • 設立:1929年
  • 資本金:6000万円
  • 売上高:600億円(グループ合計、2017年5月期)
  • 従業員数:1080名(グループ合計、2017年5月現在)
  • 事業内容:医療・医薬・介護・バイオ専門商社
  • http://www.sanshodoh.co.jp/
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    06-7177-4008
    担当:タナベコンサルティング 戦略総合研究所