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今週のひとこと

売り方が多様化している。顧客がどんな
買い方を望んでいるのか、それをつき
とめて、新しい販売方法、販売ルートを
発掘していこう。

☆ 販路開拓を成功させるための3つのポイント

 まずはじめに、皆さまは「販路開拓」ということについて、どのような理解をされていますか。顧客リストをもとに、片っ端から電話をかけてアポイントを取り、訪問・提案し、顧客開拓していくことでしょうか。
 答えは「Nо」です。販路開拓において、あらたな顧客の開拓は必要ではありますが、ただ闇雲に開拓していくことではありません。ここでは、販路開拓とは、「従来と異なる切り口で、未開拓の市場・販路へ戦略的にアプローチすること」と定義させていただきます。「質×量」を追求し、新しい価値を創造する取り組みであるという意味です。

 さて、昨今、販路開拓で目立つのが、インターネットの販売チャネル開拓で、いわゆる「ネット通販」の取り組みです。スマートフォンが普及して10年余りが過ぎ、今年中にはBtoCのネット通販市場は、年間10兆円を越える見込みです。アマゾンや楽天といった通販モールや、メーカーによるネット通販への進出が市場の拡大に寄与しています。「オムニチャネル」という概念も一般的になりました。
 特に、メーカーがネット通販事業に取り組むケースが目立ちます。古くからある卸売や小売店といったチャネルを通じての販売だけでは、よほど強力なブランド力が無い限り、販売における主導権をメーカーが握ることは難しいでしょう。「特売セール」で価格を叩かれ、結果的にブランド価値を毀損させかねません。
 一方、メーカーがネット通販チャネルを開拓することで、直接的に小売りをコントロールすることができます。そうすることで、自由自在なブランディングや、ターゲット顧客の獲得が可能となります。
 もともとドラッグストアに商品を卸していた化粧品や健康食品のメーカーが、女性やシニア層をターゲットに、ネット通販の販路開拓に成功しているケースは、そのよい事例でしょう。

 最後に、販路開拓におけるポイントを3つご紹介します。
 1つめは、「テストマーケティング」です。市場調査・適切な販路を見極めるために、エリア限定販売といった方法でテスト的に取り組むことです。
 2つめは、「商品の最適化」です。販路にマッチするよう、パッケージデザインの変更など、商品をモデルチェンジすることです。
 そして、3つめは、「行動計画を立て、PDCAサイクルをまわす」ことです。いくら優れた商品であっても、何もせずに簡単に売れるわけではありません。5W2Hに基づいて行動計画を立て、定期的なプロジェクト会議などで検証し、行動計画を修正することです。

 環境変化のスピードは年々激しさを増しています。1日も早く新たな販路への可能性を探り、はじめの1歩を踏み出すことをお勧めします。

SPコンサルティング本部
課長
西井 勝

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売り上げ拡大や人材採用に直結するマーケティング

経営者や現場の担当者とディスカッションをしていると、「マーケティング」や「プロモーション」への関心が以前よりも高まってきていることを実感する。それは、従来の売り上げ拡大、つまり自社の商品・サービスの価値をターゲットに訴求し、「顧客獲得」と「単価アップ」を目的としたものだけではない。例えば、会社の魅力を社会に対して訴求し、優秀な人材を集めようとする、いわば「採用マーケティング」の観点からも関心が高まっている。

「投資効果」がなかなか表れない

しかしながら、実際、マーケティングに関心を持ち、力を入れている企業の全てが成果を上げているかと言えば、そうではない。 「商品・サービス紹介のためにホームページを作成した」「リピート顧客を狙ってアプリを導入した」、あるいは「大手就職サイトと契約した」など、積極的にメディアへ投資し、プロモーションを行っても、期待した効果が表れない企業は多い。私がコンサルティングを手掛けているA社もその一つであった。 A社はクリーニング業を営んでおり、このほど自社のホームページをリニューアルした。また、会員顧客にクーポンやキャンペーン情報を提供するアプリを導入するなど、Webプロモーションを中心に積極的な施策を打った。しかし、結果は期待通りのものではなく、ホームページの閲覧数はリニューアル前とほぼ変わらず、アプリ会員数も伸び悩み、売り上げは減少した。

カスタマー視点と訴求タイミングの欠如

A社の問題は、大きく2点あった。 1点目は、ホームページに「カスタマー視点」がなかったことである。A社のホームページの内容のほとんどは工場の機械・設備の画像であり、それを難解な専門用語で説明していた。自社の技術力の高さの根拠として掲載していたようだが、一般消費者が関心を持つには難しい内容であった。 2点目は、メディアへの訴求のタイミングが悪かったことである。 フィールドインタビューを実施したところ、新規顧客は、A社自体を認知している人が少なかった。また、既存顧客に関しては、ホームページやアプリの存在を知っている人が圧倒的に少ないことが判明した。 つまり、A社自体やホームページの認知度が低いため、カスタマーがそもそもホームページを検索しようとしていなかったのである。もし、これがA社やホームページ、アプリ自体の認知が高い状態であったならば、来店効果は出ていただろう。 前者の「カスタマー視点の欠如」に関してはペルソナの設計、後者の「メディア訴求のタイミングの悪さ」に関しては、カスタマージャーニーに基づいたメディア戦略を行うことで改善に取り組んだ。


【図表】ペルソナの設計方法

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ペルソナを設計してコンテンツを作成する

カスタマー視点の欠如を解決するために、最も重要なことは、ペルソナを設計することである。「自社の商品やサービスを購入してほしい顧客の特徴」、つまり年齢や情報や住所、職業のようなプロフィール情報と、「何に関心があり」、「何に困っているのか」、「普段どのような生活をしているか」などのライフスタイル情報を掛け合わせ、設計していく。 具体的な設計の仕方は、まず定量的情報の収集として、顧客データや公的機関の統計データを活用しながら、自社のターゲット顧客となりそうな層を整理していく。次に定性的情報の収集としては、ターゲット層に直接インタビューを行ったり、日頃、顧客と接点がある現場のスタッフにヒアリングしたりするなどして情報を収集していく。収集した情報の共通点や傾向を整理し、1人の架空の人間を設計していくという手順を経て、ペルソナは完成する。(【図表】) ペルソナを設計することのメリットは、カスタマーを意識したコンテンツが作成できる点である。A社の1点目の失敗は、このようなペルソナを設計していなかったため、本来のメインターゲットの主婦が好む内容をコンテンツに盛り込めなかったのである。A社は、「子どもの健康に気を使う32歳の主婦の佐藤律子さん」というペルソナを設定することで、主婦層にとって魅力のある「安全で自然に優しい洗剤」という情報がホームページに加わることになった。


カスタマージャーニーに基づきコンテンツを配置

;">カスタマーのペルソナを設計した後は、そのペルソナの「認知」から「行動」までを想像しながら、メディアを設定・配置していく必要がある。この際、「カスタマージャーニー」という考え方が有効だ。 これは、顧客が商品・サービスを認知し、その後、さまざまな接点を経て関心を持ち、比較・検討して購入に至る一連のプロセスを、「ジャーニー(旅)」に例えたものである。 カスタマージャーニーを活用すれば、どのタイミングで、どのような内容を、どの媒体で訴求すればよいのかが見えてくる。A社の事例では、そもそも店やホームページの認知がなかったため、効果が出なかった。この点に関して、チラシによって店の認知をアップさせることに加えて、ホームページやSNSに詳細な情報があると訴求することで、A社の来店効果は改善していった。 マーケティングやプロモーションを展開していく中で、カスタマー視点は何よりも原点となる。自社の商品・サービス、もしくは企業自身の魅力を伝えていくために、いま一度、カスタマー視点に戻って戦略を考えてはいかがだろうか。

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  • タナベ経営
  • 経営コンサルティング本部
  • コンサルタント
  • 小泉 博史
  • Hirofumi Koizumi
  • 「企業の思いの実現・達成」を信条に、企業のマーケティングをサポート。広告などのプロモーションのみではなく、ブランドコンセプト、商品・サービスづくり、人づくり、オペレーションの改善までを推進する。企業と顧客を結び付ける「価値」を創造するパートナー。

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「九州の味」へのこだわりと「真心」を伝える人材を育成

「九州の味」と「真心」を届ける

「九州のソウルフードは?」と聞かれて、とんこつラーメンを思い浮かべる人は多いだろう。2018年に発売40周年を迎えたカップ麺「焼豚ラーメン」をはじめ、味と麺にこだわった即席麺・乾麺作りで、多くのファンに愛されているのがサンポー食品だ。 1921年に米穀卸「大石商店」として創業し、49年に製粉業に乗り出した。その後、即席棒状ラーメン「三宝ラーメン」や即席袋麺、カップ麺と、商品のバリエーションを広げながら成長を遂げてきた。 ものづくりの基本にあるのは、スープの味と製粉業で培った麺へのこだわりである。粉末スープについては配合割合を自社で決め、混合も行っている。時代の変化とともに変わる消費者ニーズに合わせて、リニューアルを重ねてきた。とんこつラーメン発祥の地である久留米のラーメンのおいしさを、より手軽に消費者に届けるのが同社のラーメン作りの原点だ。 麺についても、福岡県産のラーメン専用小麦「ラー麦」を使用した商品開発を積極的に進め、地元九州の活性化に寄与している。「『九州の味』と『真心』をお届けする」を企業理念に掲げ、食を通じて消費者の満足と社会貢献を追求する同社。地元に根差した商品づくりで、消費者のみならずスーパーなど流通業者からも愛される存在となっているのだ。

味と麺にこだわったカップ麺、即席麺、乾麺作りで多くのファンに支持されているサンポー食品。他社とのコラボレーション(上は九州の名店「丸星ラーメン」と「焼豚ラーメン」のコラボ商品)や健康志向商品など、時代のニーズを捉えた商品開発にも積極的だ。

成長企業の共通点は人を大切にすること

これまで地元密着にこだわり、関東地方や海外から出店オファーがあっても断ってきたサンポー食品。しかし、少子高齢化・人口減少の局面を迎える中、パイの拡大を見据え、近年は積極的に九州以外への展開を模索し、2017年には東京・浜松町に東京オフィスを開設した。 フィールドを広げる際に重要なのが人だ。代表取締役社長の大石忠徳氏は、2011年からタナベ経営主催の研究会・企業視察などに参加する中で、「『会社の発展は社長や経営陣ではなく社員がつくる』『成長する企業は皆、人を大切にする』ことに気付いた」と語る。そして、会社の理想像を思い描いた際に、社員を大切に育てる会社にするしかないとの結論に至ったのだ。 そこで同社は5年前から、タナベ経営と共に人事制度・教育体系構築に向けて取り組みを進めてきた。現在は若手、中堅社員(主任・係長クラス)向け研修を毎年実施するほか、チームリーダースクール、業務改善スクール、幹部候補生スクールなども毎年受講。また、採用についても体系化するため、採用マニュアルを作成した。これまで高卒者と中途人材の採用が中心だったが、近年は大卒者も採用するなど、ここ5年ほどで同社の人づくりは大きな変化を遂げている。 研修やセミナーを通じて、「社員のベクトルがそろってきている」と大石氏。また、従来は「雇われている」意識の強かった社員にも「経営目線」の思考が生まれ、会議などの場で積極的な発言も生まれるようになってきたという。 大石氏はさらに、「社員が『この会社で頑張ってよかった』と思える会社にしたい。そのためには社員が一丸となって、会社の発展を目指すことが大切。また、頑張っている社員が報われる人事制度や仕組みも重要」と力を込める。

サンポー食品 代表取締役社長 大石 忠徳氏

サンポー食品 代表取締役社長 大石 忠徳氏

「おいしい商品を届ける」思いを全員で共有

食品業界で淘汰や再編が進む中、サンポー食品は今後、独自性を打ち出しながら成長を図る戦略を描く。また、他社とのコラボレーションや、健康志向商品など時代のニーズを捉えた商品の開発にも積極的に取り組んでいく方針だ。大手にはない、小回りの利く生産体制という強みも存分に発揮していくという。いずれも、「サンポー食品に任せておけばおいしいものを作る」という顧客の信頼があるからこそ実現できることである。 大石氏が社員に求めるのは、「消費される現場に思いをはせること」。つまり、どうやって消費者に「おいしい」と思ってもらうかを常にイメージしながら仕事に取り組む姿勢である。「サンポーの商品は何を食べてもおいしい」と顧客から支持されるのも、同社が単なるものづくりではなく、真心を伝える思いで事業に取り組み、それが伝わっているからに他ならない。 営業だけでなく、製造の現場にもそうした消費者の思いやニーズが伝わるよう工夫していきたいと大石氏。開発担当者と営業担当者の同行営業などはその一例。「消費の現場を実感し、共有することが何よりも重要であり、事業の原動力になる」と指摘する。 取材の最後に大石氏は、若手社員に対して「仕事を通じて人格形成を目指してほしい。若い時はやり過ぎたり、言い過ぎたりすることがあってもいい。いろいろな経験をする中で、大きく成長してほしい」と熱いエールを送る。

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PROFILE

    • サンポー食品㈱
    • 所在地:佐賀県三養基郡基山町長野230(本社) 東京都港区海岸1-2-3 汐留芝離宮ビルディング21階(東京オフィス)
    • 創業:1921年
    • 代表者:代表取締役社長 大石 忠徳
    • 売上高:23億円(2018年7月期)
    • 従業員数:100名(2019年1月現在)
    • 即席麺(カップ麺、棒状ラーメン)および乾麺の製造販売 https://www.sanpofoods.co.jp/

タナベ経営より

サンポー食品は、九州の食文化を支えてきた創業90年を超える老舗企業である。祖業の米穀卸から製麺業へ事業を転換、即席麺・乾麺へと進出した。同社の「焼豚ラーメン」は発売から40年を超え、今なお親しまれるロングセラー商品となった。また、業界で一目置かれている高い開発力を生かし、九州の有名ラーメン店とのコラボ商品を生み出すなど新たな挑戦も続けている。近年は「企業は人なり」の考えのもと、人材育成へ注力し、社員の意識改革に努めてきた。今後、日本にとどまらず、世界で同社の商品が親しまれる時代が到来することを期待してやまない。

経営コンサルティング本部チーフコンサルタント 井上 禎也 サンポー食品は、九州の食文化を支えてきた創業90年を超える老舗企業である。祖業の米穀卸から製麺業へ事業を転換、即席麺・乾麺へと進出した。同社の「焼豚ラーメン」は発売から40年を超え、今なお親しまれるロングセラー商品となった。また、業界で一目置かれている高い開発力を生かし、九州の有名ラーメン店とのコラボ商品を生み出すなど新たな挑戦も続けている。近年は「企業は人なり」の考えのもと、人材育成へ注力し、社員の意識改革に努めてきた。今後、日本にとどまらず、世界で同社の商品が親しまれる時代が到来することを期待してやまない。

経営コンサルティング本部チーフコンサルタント
井上 禎也

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    担当:タナベコンサルティング 戦略総合研究所