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今週のひとこと

わが社の真の強みは何か、真の顧客は誰か、
顧客に評価される真の貢献とは何か。
その正体をつかんでこそ、会社は伸びる。

☆ ビジョンマネジメントブックがビジョン実現を加速させる

 多くの企業で中期ビジョンや中期経営計画が策定され、社員はそのビジョンに沿って業務を遂行しています。したがって、ビジョンの実現を加速させるためには、社員の動きを加速させることが必要であると言えます。
 しかし、「ビジョンを発信しても社員に浸透しない」「社員の価値判断が変わらない」などの課題を抱える企業が数多く見受けられます。

 今回は、ビジョンの実現を加速させる際に効果を発揮する「ビジョンマネジメントブック」の活用方法をご紹介します。
 前述のとおり、ビジョンマネジメントにおける主な課題には、次の3点が挙げられます。

1.ビジョンが社員に浸透しない
2.社員の判断や行動が変わらない
3.ビジョンに沿った行動をしても評価されない

 まず一つ目は、ビジョンが社員に浸透しないことです。ビジョンを発信しただけで終わってしまい、その後の浸透させることへの取り組みが不足している状況です。自社の現状や将来の展望、ビジョン策定の経緯、なぜ必要なのかなど、ビジョン策定の"プロセス"や"思い"を共有することが大切です。そのためにも、ビジョンは経営層だけでつくるのではなく、各部門のリーダーをメンバーに加え、部門横断的にプロジェクトチームを立ち上げると良いでしょう。

 次に、社員の判断や行動が変わらないという課題については、原因が二つ挙げられます。一つは、どのような行動がビジョンに沿った行動であるか理解できていないといった場合。もう一つは、"自分には関係ない""ビジョンと日常業務は別である"といった意識の格差が原因となる場合です。
 どちらの場合も、ビジョンマネジメントブックで価値判断基準を示したり、日々のマネジメントの中で、ブックを使って経営者や部門責任者が、自らの言葉で具体的にビジョンと業務の関連性を確認したりすることが大切です。

 最後の、ビジョンに沿った行動をしても評価されないという課題については、そもそも、ビジョンに沿った行動を評価する仕組みが無いケースが考えられます。理念の実践度を人事考課や賞与・昇給で評価するケースもありますし、優秀社員として顕彰するなど、自社の特性にあわせた評価体系をつくることが大切です。
 ビジョンマネジメントブックを活用し、ビジョン実現を加速させましょう。

SPコンサルティング本部
課長
村田 幸人

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【図表】消費者の購買行動プロセスの進展

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出典:電通モダン・コミュニケーション・ラボ資料よりタナベ経営作成

 

変わらない「口コミ」の重要性と顧客との接点の変化

 

小売り・サービス業の店舗経営において、「顧客が顧客を呼ぶ」、いわゆる「口コミ」を広げる仕組みづくりは重要である。その根幹が、顧客満足度の向上であることは、すでに業界の常識となっている。現在も、口コミが最も重要な要素だということは本質的に変わりないが、その顧客との接点(コミュニケーション・ツール)は大きく変化している。

 

現在の情報社会では、かつて主流であったテレビCMなどのマス広告に加え、インターネット広告やFacebook、Instagramなどに代表されるソーシャルメディア(SNS)広告が普及している。ネット広告に関しても、単なる一方通行の情報発信ではなく、ビッグデータの活用といった双方向的な情報活用が当たり前になってきている。

 

これにより消費者の購買行動も大きく変化しており、かつてはAIDMA(アイドマ)と呼ばれた行動プロセスが、AISAS(アイサス)、SIPS(シップス)と呼ばれる行動プロセスに変化している。単純に情報を伝えるのではなく、「共感」を出発点にして顧客をファン化していくことが重要になっていると言える。(【図表】)

 

このように多様化する消費者ニーズに対し、中小企業がとるべき顧客コミュニケーション戦略はどのようなものか。大きなステップに分けると、「現状認識」、「ターゲットの具体化」(誰に伝えるか)、「メッセージの具体化」(何をどのように伝えるか)の3ステップである。

※電通の登録商標

 

 

Step1 現状認識

まずは自社の強みを基に方向性を決める。顧客の声や購買行動、自社のビジョンからコミュニケーション戦略の方向性を明確化していくのである。自社の商品・サービスは、誰に、何(商品・サービス)を通じて、どのように(手段・接点)、どんな価値(コト)を提供するのかをまとめていく。

 

ここでのポイントは、適切なデータ収集と分析である。顧客の声などの具体的な内容から強みと弱みを明確化していくため、根拠となるデータの質が重要になる。適切なデータ収集のためには、ある程度の仮説を立てておく必要がある。その仮説に基づいてアンケートを行ったり、イベントでヒアリングを実施したりすることで、必要なデータを集める。

 

Step2 ターゲットの具体化

次に、Step1で見えてきたターゲットをより掘り下げていく。ここでは、「誰に」という部分が非常に重要となってくる。ポイントは、できる限り具体的に絞り込んだターゲット設定を行うことである。その際は、ペルソナ(ある1人の架空の顧客像をイメージすること)を設定するとよい。

 

例えば、「40歳代の主婦」というターゲット像だけでは漠然としたメッセージしか打ち出せず、さまざまな広告媒体に満遍なく手間と費用をかける必要が生じてしまう。そうではなく、ペルソナを設定することで「同居の息子がいる、日中はパートに出ている、休日は家族でショッピングに出掛ける」などの生活スタイルや、「料理には一工夫を凝らしたい、健康志向・美容促進に興味がある」などの趣味・趣向を押さえることで、どのようなメッセージをどんな接点・タイミングで伝えるべきかが見えてくる。

 

適切なペルソナを設定するためには、POS(販売時点情報管理)レジやアプリからの顧客情報と購買動向、自社サイトを訪問するユーザー情報をより詳細に収集・分析できる仕組みを作っておく必要がある。

 

Step3 メッセージの具体化

最後に、自社の強みと顧客価値の最大公約数をメッセージとして具体化し、発信する。ポイントは、期待する行動を明確にイメージしておくことと、最適な接点(コミュニケーション・ツール)で伝えることである。来店頻度を増やしてほしいのか、購入単価を上げてほしいのか、誰かを紹介してほしいのか、それぞれでメッセージの内容は変わるはずだ。

 

メッセージの目的が決まれば、ターゲットのペルソナを基に、どのような接点で、いつのタイミングで発信すれば、より伝わるかを検討する。この接点は単体で考えるのではなく、他のものと連動させて情報拡散を促すことが重要となる。例えば、マス広告やSNSで興味を引き、ネットで検索させて来店を促し、SNSでの共有やアプリのダウンロードでポイントを還元するといった形である。

 

テクニックで言えば、SNSや広告でメッセージを伝える際は、自社の強みや"オススメ"を打ち出すというのではなく、ターゲットの興味を引くことを第一にして、その上で自社の強みを感じてもらえるようにすることが重要である。前述のペルソナ設定に合わせると、「○○の商品が安くてオススメ!」という内容よりも、「今が旬の○○は△△の作用で美容に効果的」という内容の方がターゲットには刺さる。

 

 

顧客コミュニケーション戦略の要

 

コミュニケーション・ツールを活用し、ターゲットにメッセージを伝えることで顧客行動を変化させていく仕組みづくりの基本は以上だが、顧客満足度向上の要は、あくまでも実店舗での商品・接客サービスというアナログな部分にあることを忘れてはならない。コミュニケーション戦略で伝えるメッセージがいかにターゲットのニーズを捉えていても、実店舗で感じる印象が違えば、満足度は上がるどころか下がり、逆効果になる可能性が高い。

 

そのため従業員はもちろん、パート・アルバイトにも戦略の要点を浸透させ、メッセージと日々のオペレーションに一貫性を持たせられないと、効果は期待できない。

 

単なる販売促進ではなく、デジタルとアナログをうまく連動させて顧客とのコミュニケーションを改善することで、重点顧客に選ばれ続け、その顧客が新しい顧客を呼ぶ善循環の仕組みづくりを進めていただきたい。

 

 

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  • タナベ経営
  • 経営コンサルティング本部
  • コンサルタント
  • 荒砂 尚樹
  • Naoki Arasuna
  • 「クライアントを笑顔にする」というポリシーで、人事・人材開発コンサルティング、幹部育成研修などの分野で幅広く活躍。経営課題に真摯に向き合い、粘り強く解決していくことで、着実に成果につなげ、共に成功体験を生み出す取り組みが高い評価を得ている。

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CS&ES最優先思想で東北ナンバーワンの商社へ

 

東北全域を視野に入れ管工機材を迅速確実に供給

 

藤村機器は青森県弘前市に本社を置き、水道・ガス・電気を安定供給する管工機材をはじめ、空調システムや住宅設備機器などを扱う専門商社である。同社は1957年の設立以来、事業エリアの拡大に努め、青森支店と八戸支店、秋田県に大館支店と秋田営業所、宮城県に仙台支店を展開。子会社の新日東鋼管の拠点(岩手県に8カ所)を加えて、ほぼ東北地方全域で事業を手掛けている。

 

さらに、同業他社をしのぐ圧倒的な品ぞろえも同社の強み。400社近い仕入れ先から多種多様な商品が供給される体制を確立し、本社倉庫と資材センターは厳密な管理体制の下で6000点超の在庫を擁している。そして、外部業者に委託せず、自社の専任配送員によって迅速で確実な納品を行うことも、顧客の信頼を築く要因になっている。

 

「当社のお客さまはほとんどが設備工事会社で、現在1000社超の会社とお付き合いがあります。お客さまから寄せられるあらゆるニーズに的確かつ迅速に対応できる提案力が、お客さまとの深い信頼関係を築く原動力です」と代表取締役社長の藤村充氏は言う。

 

同社の社員が提案力に磨きをかける背景には「顧客の立場にたって仕事を行う」という経営理念の条項がある。

 

「お客さまの立場に立って物事を考えないと、お客さまの役には立てない。その思いが社員に共有されている証しと言えます」(藤村氏)

 

 

誠実な人間を育成し社員の生活向上に努める

 

商社である藤村機器にとって、人材育成こそが同社の将来を左右する最重要事項だと藤村氏は述べる。そして「2代目社長を務めた私の祖母は『社員が自分の子どもを入社させたいと思うような会社にしたい』と言っていました。その思いを私の父である前社長(藤村徹会長)も私も大切にしています」と続ける。確かに人材育成は、経営理念に掲げる「社員の生活向上に努力を払う」という条項に直結する。

 

藤村氏は「誠実な人間をつくること」を人材育成の基本としている。誠実とは、常に顧客の立場に立って物事を考えることだ。

 

人材育成で苦労した点について、「イエスマンが多く、言われたことはきちんとやるが、それ以上のことは考えられない社員が多かった。特に40歳代以上の管理者が顕著でした」と同氏は言う。以前、管理者をタナベ経営の幹部候補生スクールに参加させていたが、景気の悪化に伴って中断したところ、数字の管理はもちろん、部下の育成面でもレベルダウンしたと振り返る。

 

そこでタナベ経営に相談し、ジュニアボードを活用した経営幹部の育成に取り組んだ。そこでの成果を確認した藤村氏は、新たに支店長候補や次世代管理者へ向けた講習を実施。さらに、先輩社員を講師にした若手社員の社内講習も行うようになった。

 

「当社は商社なので、他社との価格差は微々たるもの。お客さまが求めるものを的確に提案することで、他社より多少高額でも購入してくれるようなお客さまを確保できる営業担当者が不可欠ですし、そのような人材を育成できる仕組みを考えなくてはいけません。昨年、社内でES(従業員満足度)アンケートを実施したところ、若手社員を中心に『もっと知識やスキルを覚えたい』と講習を望む声が上がりました。私がやりたいことと社員の要望が同じベクトルを向いていることが確認できたので、より意欲的に社員育成に取り組んでいこうと思います」

 

さらに、子会社の新日東鋼管の経営理念を藤村機器の経営理念と統一。続いて賃金水準や評価制度を含めた人事体系を、藤村機器に近づける取り組みを進めることで両社の交流を深め、互いの社風や人材像を融合させ、事業拡大を促進させるシナジー効果の発動を狙っている。

 

同社が大切にしている「経営理念」。本社に入ってすぐの位置に掲げられ、いつでも確認することができる
同社が大切にしている「経営理念」。本社に入ってすぐの位置に掲げられ、いつでも確認することができる

 

 

藤村機器 代表取締役社長 藤村 充氏
藤村機器 代表取締役社長 藤村 充氏

 

施工サービス領域を拡充し業界ナンバーワンへ

 

現在、藤村機器の年商は約140億円で、東北地方では業界ナンバー2の規模である。今後、まずは年商200億円を達成して業界ナンバーワンとなり、そのスケールメリットでリーズナブルな商品を提供するとともに、両社の得意分野を補完し合い、より高いソリューションを顧客に提供することを目指している。

 

業績を伸長する事業として期待されるのが、顧客の最大の悩みである"人手不足"を解消する施工サービスの提供。自社施工部門の充実を図るほか、施工会社や同業他社を対象にしたM&Aも検討している。

 

「後継者不在で会社を手放したい同業者は数多い。M&Aで施工のノウハウやアイデアを充実させるチャンスと言えます。それによって川下への事業展開を図りたいですね」(藤村氏)

 

施工サービスは、物販よりも利益率が跳ね上がる。弘前市周辺では藤村機器しかできない工事手法を使った案件が増えており、「現在の経常利益率は約3%と商社としては高い方だが、サービス領域を拡大させて5%くらいにまで伸ばしたい」と藤村氏は抱負を述べる。

 

このような目標を完遂するためには、若手社員の活躍が不可欠だ。藤村氏は若手社員へ「人生の目的は、幸せになること。一人一人がたくましく成長し、仕事を通して自分だけでなく家族や周囲の人たちを幸せにする喜びを感じてもらいたい」と熱いエールを送る。

 

PROFILE

    • 藤村機器㈱
    • 所在地:青森県弘前市高田3-6-2
    • 設立:1957年
    • 代表者:代表取締役社長 藤村 充
    • 売上高:144億2200万円(連結、2018年6月期)
    • 従業員数:171名(連結、2019年5月現在、パート含む)

 

 

 タナベ経営より  
藤村機器は400社近い仕入れ先と6000点を超える在庫を擁し、子会社の新日東鋼管と共に東北全域で管工機材、住設機器を展開する専門商社である。
藤村社長が先代から受け継いだ「社員が、自分の子どもを入社させたいと思うような会社にしたい」との思いは、時代を超えて社員、顧客、地域から必要とされ続けることであり、その実現する姿勢には社員に対する愛情も感じられる。
「人材育成こそが将来に向けた最優先事項である」と話す藤村社長の言葉には、社員と共に東北ナンバーワンを目指す強い決意が感じられる。同社の今後が楽しみである。

 

経営コンサルティング本部支社長藤井 健太
経営コンサルティング本部
支社長
藤井 健太

 

経営コンサルティング本部副支社長日下部 聡
経営コンサルティング本部
副支社長
日下部 聡

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    担当:タナベコンサルティング 戦略総合研究所