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今週のひとこと

「捨てる」ことを明確にしよう。ブランド力を維持するには、
売らない顧客、売らない価格、やらないサービスを決め、
徹底しよう。

☆ 差別化のカギは価値の「非数値化」

 住宅業界においては、人口減少、新設住宅着工戸数の減少、職人不足、人件費や資材の高騰など取り巻く環境は年々厳しく、新築市場においては競争が激化しています。住宅を建てれば売れる時代ではなく、選ばれる住宅を建てないと売れない時代に入りました。

 現在、マーケティングにおける差別化のポイントとして「モノ売りではなくコト売りが必要だ」といわれているのは皆さまもご存知かと思います。
 では、住宅におけるコト売りとは何でしょうか。昨今、エンドユーザーにおける省エネ性に対する関心の高さから、他社との差別化として「省エネ性や断熱性などの住宅基本性能」に重点を置き、打ち出している会社も多くあり、いまやローコストメーカーでさえ住宅性能の高さを売りにしています。
 しかしながら、住宅性能は「コト」でしょうか。確かに建物そのものの立地や間取り、価格(=モノ)でなく、建物から派生する「性能」という点を売りにしていますので、一見すると「コト売り」のように思えます。住宅の性能は、省エネ等級、UA値(外皮平均熱貫流率:熱量の屋外への逃げやすさ)、Q値(熱損失係数:熱が逃げにくい家)、C値(相当すきま面積:どれくらい家に隙間があるか)など、さまざまな指標によって数値化されます。数値化された性能は、もはや「コト」ではなく「モノ」であり、住宅会社の比較は、単なる数字の比較になってしまいます。

 筆者の考える住宅におけるコト売りとは、住む人がその家で過ごしたい日常をどう実現できるのか、つまり、その家でどういう生活が送れるのかということです。家族で楽しく食事ができる家、趣味に没頭できる家、健康で長生きできる家など、住まう人の価値観や人生観、家族構成、趣味嗜好(しこう)によって「コト」は多種多様になります。
 物質的な満足よりも精神的な満足、経験価値や体験価値が重視される昨今において、住宅会社が打ち出す真の差別化とは何でしょうか。「伝え方」だけでなく「伝わり方」も意識して取り組むべき問題ではないでしょうか。

経営コンサルティング本部
コンサルタント
濵 大輔

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ブランドを陳腐化させないためには

「ポスト2020」に予測される需要減と過当競争に備えるため、いまやブランディングは企業の必須課題となっている。自社を「価格ではなく、"価値"で選ばれる」企業体質にしておかなければ、将来的に生き残っていくことさえ難しい。

中堅企業や老舗企業の場合は、すでにブランドとして確立し、認知されているケースも多い。ただ、注意しなければならないのは、ブランドは放っておくと劣化していき、やがては陳腐化していくことだ。長年にわたりブランド力を維持していくことは、実は難しい。それをいかに磨いていくかが当面の重点になるだろう。

ブランドは劣化していくと、顧客が離れてリピート率は下がり、価格競争に巻き込まれ、付加価値も目減りしていく。やがて生産性が落ちて社員も辞めていくという悪循環に陥る。そこに歯止めをかけることは、企業の競争戦略上からも外せないテーマだ。

そこで、ブランドを維持・管理していくための取り組みを【図表1】に示した。

大きくは「顧客の期待を裏切らないこと」、「ブランドを浪費しないこと」、「ブランドを腐らせないこと」の3点に集約される。

顧客からの信頼を裏切らないためには、製品やサービスの品質管理はもちろん、顧客との接点である接客対応でも満足度を高めなくてはならない。社内ルールやマネジメントの仕組みも必要であり、品質基準や検査などのマニュアルを作成・共有して、厳格に運用していくべきだろう。

また、むやみに製品・サービスを増やすとブランドイメージが散乱する。例えば、価格のラインアップが多過ぎれば、ブランドとしての価値を維持できない。高級ブランドが低価格商品を出さないのは、そのためである。

積極的な新商品開発や新しい顧客へのアプローチもポイントの1つだ。変わらないことも大事だが、あえて変えていくことも必要になる。

例えば、「アサヒ」「キリン」といえばビール業界の大ブランドだが、「スーパードライ」(アサヒビール)や「一番搾り」(キリンビール)がなかったら、両社のブランド力は陳腐化していたかもしれない。顧客の潜在ニーズをつかむ努力と、研究開発で新たな技術を磨いていくことが、ブランドの新鮮さを保持することになる。

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「リ・ブランディング」を推進する

ブランドにはライフサイクルがあり、気が付かないうちに「老化」している場合もある。老化の症状は陳腐化よりも深刻で、より抜本的な改革が迫られる。自社ブランドのライフサイクルを検証し、もし老化の段階に入っている場合は、「リ・ブランディング」によってブランドをリニューアルする必要がある。

【図表2】にリ・ブランディングを推進していくための着眼を示した。「ターゲットの再設定」、「ブランドバリューの開発」、「インナーブランディングの徹底」の3つである。

老化の兆候は、ブランドがターゲットにしている顧客層に表れる。例えば、顧客の年齢層が50代や60代ばかりだと、時間とともに顧客は確実に減っていくだろう。その場合、20代や30代の若い世代をターゲットとして再設定する必要がある。

また、ブランドのターゲットを変える場合は、それに合わせてやり方も変えなくてはならない。若年層を狙っていく際は、その層が"ミレニアル"と呼ばれる1980~2000年代初頭に生まれた世代で、「デジタルネイティブ」であることを念頭に置くべきだ。今の50代や60代とは、価値観や行動様式がまるで違うからである。

生まれた時からパソコンなどのデジタル機器がある環境で育っており、スマートフォンやSNSでのコミュニケーションが当たり前になっている。消費では「モノよりも体験」を重視し、「何を買うか」よりも「なぜ買うか」に判断基準を置いている。そうしたターゲットの特性に合わせたブランディング戦略をとることになる。

また、ミレニアル世代へ新たなブランドコンセプトを訴えるためには、映像が効果的な手段になる。特に、YouTubeやInstagramが情報共有の場として知られている。

BtoB企業においても考え方は同様である。主要顧客の業界が偏っており、それがもし衰退マーケットだとしたら、将来的には顧客が消滅しかねない。その場合はターゲット自体を変えていくべきであり、将来性が見込める成長分野の顧客へシフトしていくことになる。医療・福祉などのヘルスケア分野、環境・新エネルギー分野、ロボット・IoT・AIなどの先端テクノロジー分野など、自社のブランドコンセプトとの接点を探っていくことだ。

また、製品価値よりもサービス価値に重きを置いて、自社の固有技術を成長分野で生かせるように、ブランド価値自体を再設計・再開発していくことも必要になる。

社員も古い慣習や従来の価値観を捨て、新しい分野にチャレンジしていく意識改革が求められる。ブランドのターゲットや提供価値がいくら新しくなっても、社員が旧態依然とした考え方では、いずれメッキが?がれてしまう。

新たなブランドコンセプトに基づく階層別研修、ブランドブックの作成、社内広報による定期的な情報発信など、インナーブランディング(社員に対しブランドの価値や目指す姿を理解させる啓蒙活動)を推進していく。もし変わらなければ、それにふさわしい人材を中途採用することも組織のカンフル剤になる。

ブランドを進化させることで、社員も成長していくことが理想的な姿だ。それを導くのが経営トップの役割である。そのため、トップにはインナーブランディングで妥協しない決意と覚悟が求められる。ぜひ、リ・ブランディングの実現に向けて、リーダーシップを発揮していただきたい。

  • タナベ経営
  • コンサルティング戦略本部 副本部長
  • 平井 克幸
  • Katsuyuki Hirai
  • 経営者の参謀として、企業のさまざまな課題に精通する戦略コンサルタント。専門分野はブランディングをはじめ開発・マーケティングなど多岐にわたり、これまでに中堅・中小企業の成長支援を数多く手掛けてきた。著書に『タナベ流新規事業開発プログラム』(タナベ経営)がある。中小企業診断士。

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泡盛業界でトップクラスのシェアを誇る『残波』。製造する比嘉酒造が創業70周年を機に展開するプロモーションが、各地で大きな反響を呼んでいる。泡盛のイメージを超えた魅力を発信し続ける背景には、確かな商品力と「ザンパの日」を軸に据えた新たなブランディング戦略がある。

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残波ブランドで幅広い支持を獲得

寺井 比嘉酒造は創業70年を超える泡盛メーカーであり、自社ブランド『残波』は沖縄県内でトップクラスのシェアを占めるなど業界をけん引する存在です。まずは創業の経緯からお聞かせください。

比嘉 当社の創業は戦後間もない1948年。物資不足の中、メチルアルコールなど飲料用以外のアルコールを摂取して失明する人が後を絶たない状況を憂いた祖父・比嘉寅吉が、「沖縄県民に安心・安全なお酒を提供したい」との思いから創業したと聞いています。1953年には酒類製造免許を取得し、地元の読谷村高志保にちなんだ『まるたか』を発売。1980年に発売した『残波』は当社の主力ブランドに成長し、現在に至っています。

寺井 沖縄県内において、残波は非常に高い認知度を誇っています。沖縄全土に知れ渡った要因はどこにあるのでしょうか?

比嘉 名前の由来になった残波岬は県内でも有数の景勝地ですから、なじみがあり覚えやすかったことも理由だったと思いますが、知名度が一気に高まったのは1995年に放映した沖縄民謡歌手の前川守賢氏を起用したテレビCMがきっかけでした。さらに、父であり先代社長の比嘉健は、女性や泡盛が苦手な方でも飲みやすい蒸留酒の開発に力を注いでおり、試行錯誤を重ねて誕生した『残波25度(ホワイト)』『残波30度(ブラック)』によってファン層が広がったことがシェア拡大につながりました。

寺井 今、沖縄経済は観光を中心に大変活気づいていますが、それに伴って泡盛の市場規模も拡大傾向にあるのでしょうか?

比嘉 残念ながら、市場自体は縮小しています。最大の要因は、人口減少や若年層のアルコール離れが進んでいること。中でも、「くさい」「アルコール度数が高い」というイメージが強い泡盛の消費量は減少傾向に動いています。

寺井 市場活性化のためにどのような手を打たれていますか?

比嘉 当社を含めてメーカー各社は、カクテルにリキュールとして泡盛を使うなど新しい飲み方の提案に力を入れています。早い段階から若年層や女性向けの商品開発を行ってきた当社としては、その経験を生かして新たな商品開発に取り組んでいく役割があると考えています。加えて、販路を沖縄県外、さらに海外に広げるにはブランディングが必要です。「泡盛=沖縄の焼酎」という既存のイメージを超える、新たなコンセプトを発信していこうと挑戦しています。

比嘉酒造 代表取締役 比嘉 兼作氏残波ブランドで幅広い支持を獲得1972年沖縄県読谷村生まれ。東京農業大学で醸造学科を専攻。1997年に比嘉酒造へ入社し、2009年に3代目代表取締役社長に就任。泡盛振興と読谷村PRに尽力し、沖縄県酒造組合理事、沖縄県酒造組合青年部副部長、読谷村観光協会副会長、読谷村商工会理事を務める。
比嘉酒造 代表取締役 比嘉 兼作氏
1972年沖縄県読谷村生まれ。東京農業大学で醸造学科を専攻。1997年に比嘉酒造へ入社し、2009年に3代目代表取締役社長に就任。泡盛振興と読谷村PRに尽力し、沖縄県酒造組合理事、沖縄県酒造組合青年部副部長、読谷村観光協会副会長、読谷村商工会理事を務める。

『残波』を使ったカクテルや、カクテルに合う料理のレシピを提案(左)商業施設「KITTE 博多」に屋台バーを出店(右)
『残波』を使ったカクテルや、カクテルに合う料理のレシピを提案(左)商業施設「KITTE 博多」に屋台バーを出店(右)

3日8日は「ザンパの日」泡盛を超えるブランドへ

平井 昨年(2018年)、創業70周年を迎えたのを機に、全社的なブランディング戦略に取り組まれています。会社の歴史や商品に関する社員教育を実施するなど、社内に向けたインナーブランディングを進める一方、社外に向けたアウターブランディングでは「ザンパの日」(3月8日)を軸に据えたプロモーションを展開されました。新たに記念日を設定された狙いはどこにあるのでしょうか?

比嘉 幅広い層に残波を知っていただきたいと思い、日本記念日協会に申請しました。また、今年は3月4日から3月17日の期間を「ザンパ・ウィーク」と銘打ち、ターゲットを絞ったプロモーションを展開。記念日を設定することで、これまでとは違う立ち位置からブランディングをしたいと考えました。

平井 "これまでとは違う"立ち位置とは?

比嘉 泡盛が飲まれるのは主に沖縄や沖縄料理店でしたが、残波を飲むきっかけを沖縄という「場所」から、思い出や時間といった「コト」に変えたいと思いました。「どこで飲むか」から「いつ飲むか」に立ち位置を変えることで、泡盛の中の残波ではなく、お酒の一つとしてブランディングしたい。そうした気持ちがあり、2019年3月のザンパ・ウィークは、あえて焼酎の本場である福岡市でプロモーションを実施しました。

小林 今回のブランディング戦略のコンセプトとして、「伝統は先を行く」を掲げられました。コンセプトにどのような思いを込められたのでしょうか?

比嘉 コンセプトは、ブランディング戦略を考える過程で、タナベ経営の皆さんと社員が一緒に作りました。これまで培ってきた経験を生かしながら、新たな価値を生み出していく決意を込めています。

比嘉酒造 取締役 比嘉 静香氏1970年沖縄県読谷村生まれ。読谷高等学校卒業後、(株)ざまみ(現ざまみダンボール)小売部に従事した後、飲食店経営を行う。比嘉兼作氏と結婚後、2014年に比嘉酒造へ入社し、2019年に取締役に就任。飲食店経営時には読谷村観光協会理事、読谷村商工会理事を務めた。
比嘉酒造 取締役 比嘉 静香氏
1970年沖縄県読谷村生まれ。読谷高等学校卒業後、(株)ざまみ(現ざまみダンボール)小売部に従事した後、飲食店経営を行う。比嘉兼作氏と結婚後、2014年に比嘉酒造へ入社し、2019年に取締役に就任。飲食店経営時には読谷村観光協会理事、読谷村商工会理事を務めた。

福岡市営地下鉄の電車広告ジャックの様子
福岡市営地下鉄の電車広告ジャックの様子

比嘉酒造本社にて撮影
比嘉酒造本社にて撮影

焼酎の本場・福岡市でプロモーションを敢行

貞弘 ザンパ・ウィークではどのような層をターゲットとして設定されましたか?

比嘉 20歳代から30歳代、40歳代の働く男女を想定しました。それに合わせて博多市の商業施設「KITTE(キッテ)博多」に屋台バーを出店して、残波を使ったカクテルや沖縄料理以外とのマリアージュを提案するなど、ターゲットに合わせて"インスタ映え"するキャンペーンを実施。他にも、JR博多シティでのサンプル配布や福岡市営地下鉄での電車広告ジャック、LOVE FM 福岡協賛の「LOVE FM FESTIVAL2019」への出店など、さまざまなプロモーションを展開しました。

貞弘 想定していたターゲットにアプローチできましたか?

比嘉 手応えは十分に感じられました。駅で配布したサンプルの評判は上々で、用意していた5000個(2日間分)のサンプルを予想よりも早いペースで配り終えました。また、電車広告ジャックなど多くの人の目に残波が触れたことで、新たな層に残波を知っていただいたことはもちろん、一度でも沖縄に来たことがある人に思い出していただいたり、残波を手に取っていただいたりするきっかけになったと思います。この影響が、今後どのような形で出てくるか非常に楽しみにしています。

飯田 プロモーションの一環として、単行本累計発行部数220万部を超える人気コミックス『ワカコ酒』(徳間書店)とのコラボボトルを発売しました。その際、すぐに多数の反響が寄せられました。

比嘉(静) メディアに紹介していただいたこともあって、販売開始から3日間は電話が鳴りっぱなしの状態でした。特に県外からのお問い合わせが多く、東京営業所を通して最寄りの販売店などをご紹介させていただきました。また、車で30分ほどかけて読谷村まで買いに来てくださるお客さまもいらっしゃるなど、反響の大きさに驚きました。

飯田 今回のプロモーションでは、乾杯と残波を掛けた「ザンパイ」をキーワードとしてロゴを作成し、一連のキャンペーンに使用しました。同音異語に"惨敗"という言葉があるため、反対意見もあったのではないでしょうか?

比嘉 当初、社内から反対はありましたが、私が押し切った部分はあります。乾杯にも「完敗」という同音異語がありますし、良い意味でも悪い意味でもインパクトがある方がキラーワードになるだろうと思い決断しました。

そもそも沖縄では、乾杯の時に「カリー」(嘉利)と声を掛け合う習慣がありますが、調べてみると、嘉利には「おめでたい」「縁起が良い」の他に「神様に捧げる」という意味があるそうです。それを知った時、ザンパイという言葉が妙にしっくりきました。人生は楽しいこと、うれしいことばかりではありませんが、そんな時も「ザンパイ」と杯を合わせて笑顔になってもらいたい。「ハレの日にも、そうでない日も含めて、常に人の喜怒哀楽に寄り添うお酒になれたらいいな」という、私の中にあった残波のイメージに重なりました。

タナベ経営 経営コンサルティング本部 副本部長 平井 克幸経営者の参謀として、企業のさまざまな課題に精通する戦略コンサルタント。専門分野はブランディングをはじめ開発・マーケティングなど多岐にわたり、これまでに中堅・中小企業の成長支援を数多く手掛けてきた。著書に『ブランディングの本質100年先につなぐ価値』(ダイヤモンド社)がある。中小企業診断士。
タナベ経営 経営コンサルティング本部 副本部長 平井 克幸
経営者の参謀として、企業のさまざまな課題に精通する戦略コンサルタント。専門分野はブランディングをはじめ開発・マーケティングなど多岐にわたり、これまでに中堅・中小企業の成長支援を数多く手掛けてきた。著書に『ブランディングの本質100年先につなぐ価値』(ダイヤモンド社)がある。中小企業診断士。

インナーブランディングで社員の意識が変化

西井 プロモーションを通して、どのような成果が得られましたか?

比嘉 最大の成果は、これまで表現できなかった言葉や思いを社内に浸透させられたこと。私一人の力では、自分の思いやイメージをブランディングに落とし込むことはできませんでした。もちろん、キャンペーンを通して得られた成果はたくさんありましたが、今はそれよりも社員が自社ブランドや商品について深く考えるようになったことや、マーケティングとブランディングの違いを理解したことが大きな成果だと感じています。さらに、タナベ経営と一緒に進めたことで、ブランディング以外の部分で学ぶ点が多いにありました。例えば、会議の進め方や課題解決のプロセスなどは、社員にとっても得るものが大きかったと思います。

平井 社員が商品の特徴や魅力を深く知ることで、プロモーションの幅が広がっていきます。

比嘉 ブランディング戦略の背景には、従来のイメージを一新しないと泡盛業界はもとより、アルコール業界で生き残っていけないという強い危機感がありました。おかげさまで県内では広く名前を知っていただいていますが、県外、海外となるとほとんど知られていないのが現状。さらに言えば、沖縄県内であっても若い世代からは「名前は知っているけれど飲んだことがない」といった声が聞かれます。そうした状況を変えていくには、社員教育を図りながら一人でも多くのお客さまに知っていただく努力を続けていかないといけません。

飯田 福岡市の次は首都圏に挑戦されてはいかがでしょうか。

比嘉 来年は、東京オリンピック・パラリンピックというビッグイベントがありますから、それに合わせて東京でキャンペーンを打ってみたい気持ちはあります。ただし、その場合も一気に拡大するのではなく、下から湧き上がってくるような広がり方が合っているように思います。「沖縄の残波って面白いことしているよね」と興味を持ってくださるお客さまが増えた結果、一人でも多くの方に残波を手に取っていただける形が理想です。

飯田 お客さまとの接点づくりに重点を置かれているわけですね。

比嘉 おっしゃる通りです。例えば、プロモーションの一環として3月に那覇空港で販売した、残波のロゴ入り手拭いのガチャガチャもその一つ。ガチャガチャは小銭を使い切りたい観光客に非常に人気があり、幅広い方が購入されます。そうした方にとっては、手拭いを見るたびに沖縄や残波を思い出すきっかけになりますし、お土産にもらった方であれば残波を知る良いきっかけになるはずです。一つ一つは小さなチャレンジであっても、積み重ねによって売り上げが上がっていく。社員と一緒に勉強しながら挑戦し、成長していくのが理想です。

タナベ経営 経営コンサルティング本部 部長 チーフコンサルタント 寺井 秀一大手小売専門チェーンにて店舗運営・管理業務に従事後、タナベ経営入社。中堅・中小企業のブランディング戦略の策定と、その推進を支援する経営システムの構築を得意とする。「社員の思いが企業を変える」を信条に組織活性化に挑むコンサルタント。社会保険労務士。
タナベ経営 経営コンサルティング本部 部長 チーフコンサルタント
寺井 秀一
大手小売専門チェーンにて店舗運営・管理業務に従事後、タナベ経営入社。中堅・中小企業のブランディング戦略の策定と、その推進を支援する経営システムの構築を得意とする。「社員の思いが企業を変える」を信条に組織活性化に挑むコンサルタント。社会保険労務士。

挑戦を続け既成概念を超えていく

飯田 残波の認知度が県外や海外で上がれば、泡盛業界や沖縄産業の活性化にもつながります。

比嘉 沖縄にどう貢献できるかは常に考えています。今回、ザンパの日を設定して3月8日を県外へ打って出るきっかけにしようと決めましたが、同時に、8月3日を裏・ザンパの日として、沖縄県内でキャンペーチームコンサルティング対談ンを実施しようと決めました。読谷村内の企業と協力しながら、ゆくゆくはお祭りのようなイベントを開催できたらいいなと思います。

平井 最後に、今後のビジョンについてお聞かせください。

比嘉 社長に就任して10年たちましたが、ようやく自分のしたかったことを形にできるようになってきました。これからも既成概念を変えるような、新しいことに挑戦していきたいと思います。例えば、イタリア料理を食べながら残波を飲む、和食を食べながら残波を飲むなど、当たり前とされてきた料理とお酒の組み合わせを超えて提供していきたいですし、沖縄に旅行に訪れる外国人観光客の方々に"Japanese Hard Liquor"とお伝えできるくらいさまざまな場面で提供できれば、面白くなります。そういった展開に持っていければ最高です。

平井 残波ブランドが、全国、そして海外へ広がっていくようタナベ経営も全力でサポートしてまいります。本日はありがとうございました。

タナベ経営 経営コンサルティング本部 チーフコンサルタント 小林 達男外資系ソフトウエアメーカー、国内教育ICTメーカーの営業を経て、タナベ経営へ入社。「つながりのあるチームづくり」を持ち味とし、クライアントに勇気を与える真摯なコンサルティングを展開、共に目標達成することを信条とする。また、人材育成分野でも幅広く活躍中。社内教育やマネジメントセミナーでの丁寧な指導が、高い評価を得ている。
タナベ経営 経営コンサルティング本部 チーフコンサルタント 小林 達男
外資系ソフトウエアメーカー、国内教育ICTメーカーの営業を経て、タナベ経営へ入社。「つながりのあるチームづくり」を持ち味とし、クライアントに勇気を与える真摯なコンサルティングを展開、共に目標達成することを信条とする。また、人材育成分野でも幅広く活躍中。社内教育やマネジメントセミナーでの丁寧な指導が、高い評価を得ている。

PROFILE

  • ㈲比嘉酒造
  • 所在地:沖縄県中頭郡読谷村字長浜1061
  • 設立:1948年
  • 代表者:代表取締役 比嘉 兼作
  • 売上高:18億円(2019年2月期)
  • 従業員数:44名(2019年2月現在)
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    06-7177-4008
    担当:タナベコンサルティング 戦略総合研究所