image1

今週のひとこと

業績不振を不況のせいにしてはいけない。
原因他人論の会社は経営環境が
回復しても業績は回復しない。

☆ 有事に習慣化したい三つのエクササイズ

 感染症との戦いという非常事態の中、「不安」「恐怖」「閉塞感」というネガティブな空気が蔓延(まんえん)している。人間は感情の動物であり、事実以上に感情が行動に大きな影響を与えてしまう。
 そのような日々の中で、リーダーとして実行していただきたい三つの小さなエクササイズをご紹介する。

 まずは、毎日のスタート時に「自然の癒やしで安心感でのスタートを切る」という習慣をつける。朝、家を出た後、少しゆっくり歩いて、1分程度立ち止まって、自然を感じる時間をとる。なぜか、有事の時ほど、安心感を与えてくれる。特に、大地にしっかりと根差した幹を見ていると心が癒やされる。自然を感じ、安心感をもって一日のスタートを切ることをおすすめしたい。

 日中は、「短時間の動画学習で感動をもらう」。これは、時間を選ばずに実行できる。働き方改革という時代の大きな転換期の中、私たちには、ITという素晴らしい新たな武器が与えられている。
 タナベ経営でも「FCCアカデミー」というシステムを提供し、お客さまへの支援はもちろんのこと、私たち社員もフル活用している。特に価値を感じるのは「タイムリー学習」であり、自分が学びたいときに学びたいテーマで学べるという選択ができることである。
 筆者が個人的に最も感動を感じるのは、若いメンバーがアップしてくれた動画である。素晴らしい講義を聴くと心から感動を得ることができる。

 一日の終わりは「今日できたことを確認し、感謝で振り返る」という取り組みをご紹介したい。危機下では、予想もできない事項が日々発生し、普段通りに仕事が進まないことも多い。そういう時こそ、今日できたことをしっかりと振り返り、手帳で確認し記入してほしい。
 振り返ってみると、それなりにできているものである。ここで注意が必要なのは、できなかったことを確認しないことである。
 今日も「お役に立てた」のかな、と振り返ってみると、なぜか感謝の気持ちが湧いてくる。この気持ちが明日につながっていくのである。

 リーダーの姿勢・マインドはメンバーに大きな影響を与える。有事における苦難との戦いは生きることそのものであり、このような時こそ、メンバーに安心感・感動・感謝のマインドを提供していこう。何年か後、振り返ってみた時、あの時は大変な思いをしたけれど、あの時の苦労が私たちを大きく成長させてくれたと心から感謝できるような経験にしたい。リーダーは、常に前に向かって進む人なのだから。

戦略総合研究所
副本部長
福田 季三志

consultant_reviewbanner


【図表】ゾーンの3区分
出典:筆者作成

「コンフォートゾーン」という"停滞領域"

組織の中には、「デキる人」と「イマイチな人」が存在する。読者の会社の中でも一定数、存在していると思う。職場だけではなく、例えば学校や官公庁を含めた、ありとあらゆる"組織"(もちろんタナベ経営も例外ではない)において、その2者を分かつものは何なのか。今回は、「コンフォートゾーン」という切り口から、「超一流」になるためのアプローチを解説する。

コンフォートゾーン(快適領域)とは、本人にとって「居心地の良い環境」という意味である。ストレスや恐れ、不安を感じることがなく、安心して過ごせる環境を指す。

ストレスが僅少なコンフォートゾーンに安住し続けている限り、人間は成長を見込めない。なぜ、コンフォートゾーンでは成長できないのか?それは、現在の生活環境を保とうとする潜在的な力が働く半面、それ以上のレベルへ向上しようとする意識を奪ってしまうためである。

コンフォートゾーンからラーニングゾーンへの脱出

コンフォートゾーンから抜け出して、どこに向かえばよいのか。ミシガン大学ビジネススクール教授のノエル・M・ティシー氏が提唱したコンセプトによると、コンフォートゾーンの外側に「ラーニングゾーン」、さらにその外側に「パニックゾーン」という、合計3つのゾーンがあるとされている。(【図表】)

ラーニングゾーンとは、別名"ストレッチゾーン"とも呼ばれる。コンフォートゾーンを抜け出した外側にあるもので、今までのスキルセット(自分が有する知識や技術)があまり通用しない、未知の環境である。言い換えれば、自己成長の領域と定義できる。

未知の事象と遭遇し、それに対処するための判断力・能力などを必要とする。失敗するリスクがある代わりに、成長というリターンを受け取ることが可能な領域である。

一方、パニックゾーンとは、ラーニングゾーンのさらに外側に位置する領域だ。スキルセットが通用しないだけでなく、自分の身に降りかかる事象を把握できず、コントロールすることもできない環境である。ここでは肉体的・精神的な負担が大きくのしかかり、心身にも変調を来しかねない。

成長するために目指すべきは、ラーニングゾーンである。環境の変化で一時的にパニックゾーンに身を置くことはあるかもしれないが、パニックゾーンに居続けてはいけない。必要以上の刺激やストレスを受け続けることになる。

私の趣味の「筋トレ」で例えてみよう。単純な話、現在の筋肉の能力が「100」だとしたら、101の刺激を与えるだけで筋肥大(筋肉の体積増加)が起こる。しかし、筋トレはやればやるほどよいわけではない。

ここで200の負荷を与えれば、より筋肥大が起きるのかというと、そういうわけではない。むしろ余計な刺激はオーバーワークのリスクが急激に高まるのである。

成長のための環境負荷も、同様のことが言える。


コンフォートゾーンからの抜け出し方

コンフォートゾーンから、ラーニングゾーンへと移行するためには、まず自分がコンフォートゾーンに身を置いている状況を把握することが必要となる。多くの人は、そもそも自分がコンフォートゾーンにいることを自覚していない。

自分がどのゾーンに位置しているかを理解するには、自分自身のあるべき姿(ビジョン)の設定が不可欠となる。自分はどういう人間になりたいのかというビジョンから、現状とのギャップを認識する。それによって、自らの置かれたゾーンを把握できるのである。

現状認識の方法には、「主観的な感覚から判断する」という方法もある。分かりやすく言えば、取り組んでいる業務にキツさを感じなくなってきたら、環境を変えるサインである。この他にも、ここ半年ほど困難や問題にぶつかっていないなど、成長するためのきっかけがなかった場合もコンフォートゾーンにいる可能性がある。

また、第三者(外部の人が望ましい)から定期的に客観的評価をしてもらうという手段がある。

コンフォートゾーンから抜け出して、ラーニングゾーンへと移行する上で重要なことは、「自分がどうなりたいのか」を明確にすることである。人間としてさらなる成長を遂げたい、新しい経験を積み重ねて視野を広げたい、などとコンフォートゾーンから抜け出すことで得られることを具体的にイメージするのだ。安寧な環境を脱してまで、成し遂げたい・チャレンジしたいという目的を持つことが重要なのである。

成長とは、ベクトル(向かう方向と勢い)ありきである。もし、それがなければ、日常業務に忙殺され、成長に寄与しない過酷な労働環境まで"ラーニングゾーン"だと勘違いをしてしまう恐れさえある。

戦略的な負荷の設定が人の能力を伸ばす

コンフォートゾーンから抜け出すことについて書いてきたが、誤解してほしくない点がある。それは、より高みに向かって大きく成長する方法は、「自分をできる限り、厳しく追い込む」ことではないという点である。

生理心理学では、過度なストレスはパフォーマンスを低下させるものの、適度なストレスは逆にパフォーマンスを向上させることが知られている(ヤーキーズ・ドットソンの法則)。ストレスがなさすぎると人の能力は成長しない。さりとて、ストレスが高すぎても能力は伸びない。むしろ少しだけ負荷(ストレス)をかけた方が、最適なパフォーマンスが発揮され、能力も早く伸びるのである。

コンフォートゾーンから抜け出すためには、「自身の長期的な成長ビジョン」に基づいた「長期・戦略的な負荷設定」が重要であり、ラーニングゾーンで自身のキャパシティー(受容力)より少し上の「天井」をコツコツたたき続けることが、超一流の人材になるための近道なのである。

故に、超一流の人材を育てるためには、まず部下の能力とキャパシティーを正確に把握し、その能力を"少しだけ超えた"適度な負荷を与え続けてあげることが肝要となる。同時に、自身の成長のためにも、置かれている現状に甘んじることなく、常に"自身の外側"を目指して挑戦し続けるような、変化を求める姿勢で今後の人生を歩んでいただきたい。


  • タナベ経営
  • 経営コンサルティング本部
  • コンサルタント 
  • 公文 拓真
  • Takuma Kumon
  • 銀行出身。リテールからホールセールまで融資・預金・投資部門を担当。タナベ経営入社前では、上場企業向けのシンジケートローンやプロジェクトファイナンス、M&A業務に従事していた。タナベ入社後は主に財務分析を中心とした財務戦略や中期経営計画策定支援、原価管理による収益構造改善に取り組むとともに、タナベ経営の戦略ドメイン研究会の一つである「経営の見える化研究会」に所属している。

201903_index_consultaidan 生産・開発部門を集約した新社屋「テクニカルセンター D-Labo(ディーラボ)」
生産・開発部門を集約した新社屋「テクニカルセンター D-Labo(ディーラボ)」

コミック包装機を開発して全国の書店に普及させ、新マーケットを創出したダイワハイテックス。 そのノウハウを生かして通販を中心とした物流業界へ進出し、業績を伸ばしている。 2019年1月に事業を承継した新社長は「どうやったらお客さまに喜ばれるか」を追求し、100年企業を目指す。

コミック包装という新市場を創出

大嶺 今では書店に並ぶコミックや雑誌などは、ビニールで包装されているのが当たり前になりました。その常識を生み出したのが、ダイワハイテックスです。コミック包装機「コミックシュリンカー」を開発し、全国の書店へ普及させて新マーケットを確立。業界でのシェアは90%を誇っています。

大石孝一会長は何の事業をするか決めず会社を起こされたと聞いていますが、創業当時の状況も含めてこれまでの歩みをお聞かせください。

大石(孝) 1978年に創業しました。前職で複写機の営業をやっていたので、「モノがあったら売れる」程度の感覚でしたね(笑)。

最初に手掛けたのが、知人が紹介してくれた、ゆでた麺を包装する機械の営業です。次に、包装機の展示会で知り合った大手メーカーへホック(留め金)を包装する機械を販売して生計を立てていました。

その展示会に偶然、コミックを持った来場者が現れて、「これを包装できませんか?」と聞いてきたのです。「漫画本を包装したら売れないでしょう」と言うと、「いや、そんな時代がやって来る」との答えでした。しかし、当時は包装して売っている本なんて存在しませんから、訳が分かりません。その人はどの出展企業にも相手にされず、途方に暮れていたようで、私は「展示会が終わったら、話を聞きます」と約束し、後日、本人を訪ねました。

後で分かったのですが、その人は当時、日本で十指に入るといわれた東京・中野の書店の幹部でした。コミックを包装する理由は「これから漫画本が増える。すると立ち読みが増えて、店は迷惑だし商品も傷んでしまう」とのこと。クリーニングに出したワイシャツがビニール袋に入って返ってくるようになったのを思い出し、その包装機を作っているメーカーにコミックを包装できるように改造を依頼して、まず10台販売しました。それが書店との最初の取引でした。

大嶺 「包装されたコミックを売る」という非常識が、近い将来、常識に変わると会長は予感されたのですね。

大石(孝) 包装されたきれいな本をレジに持って行くお客さまの姿を目にした時、「これはいける」と思いました。コミックの包装に将来性を感じましたが、事業化するには機械の小型化や包装資材の改良などの課題が山積していました。

資材に関しては、シュリンク(収縮)するビニールフィルムの開発元に直談判して販売代理店を紹介してもらい、仕入れの算段が付きました。

機械については、作業現場となる書店の状況を考えると、コンパクトかつ100ボルトで動くことが求められます。ところが、包装機を扱うのは設備機械メーカーだから、小さな機械を作る発想が乏しく、こちらの要望を受け入れてくれません。

そこで、創業時に掲げた「メーカーになる」「自分で作ったモノを自分で売る」「人の下請けはしない」という志に基づいて、自分で書いた設計図を板金工場などに持ち込んで試作を繰り返し、なんとかコミックシュリンカーの1号機が完成。その後は、顧客の要望を聞き入れて改良改善を重ね、品質を向上させました。

世の中になかった機械を顧客の声に沿って成長させる作業は実に面白かったですね。その機械を営業車に15、16台積んで会社を出て、空になったら帰社する。北海道から沖縄まで、行商を何年もやりました。

ダイワハイテックス 取締役会長 大石 孝一氏 1949年東京都板橋区生まれ。大手商社勤務を経て、独自性のある機械メーカーを目指して28歳の時に大和包装機械を設立。ある書店との出会いからコミック包装という新たな市場を開拓。1995年、ダイワハイテックスに社名変更。機械メーカーでありながら資材も手掛ける両輪経営で事業を軌道に乗せていく。2019年1月、長男に事業を継承し、会長に就任。
ダイワハイテックス 取締役会長 大石 孝一氏
1949年東京都板橋区生まれ。大手商社勤務を経て、独自性のある機械メーカーを目指して28歳の時に大和包装機械を設立。ある書店との出会いからコミック包装という新たな市場を開拓。1995年、ダイワハイテックスに社名変更。機械メーカーでありながら資材も手掛ける両輪経営で事業を軌道に乗せていく。2019年1月、長男に事業を継承し、会長に就任。

「どうやったらお客さまに喜ばれるか」が発想の原点

大嶺 自社オリジナルのコミックシュリンカーのビジネスモデルについてお聞かせください。

大石(孝) それまで包装機のメーカーは資材にノータッチでした。資材会社は、展示会で包装機の特徴を確認し、売り先を紹介するといった"商社的な役割"を果たしていました。その見返りとして納品後の資材調達を請け負っていたのです。

しかし、私は自分で作ったモノを自分で売る方針ですから資材会社が関与する余地はありませんし、以前は複写機を営業していましたから機械と資材をセット販売する利点を熟知しています。たとえ廉価で機械を提供しても、資材を何年も提供すると元が取れるということです。

大嶺 お客さまは「機械を安く購入できた」と喜びますね。

大石(孝) その通り。「どうやったらお客さまに喜ばれるか」という思いが、常に私の行動の原点にあります。当時、書店は盛況で新店が次々にオープンし、開店準備のための人材確保に四苦八苦していました。そこで私は、機械を納品した後はコミックの包装を手伝うことにしました。普通のメーカーは「商品を納品したらさっさと帰ってこい」と言いますが、当社では「納品してもすぐに帰ってくるな。手伝ってこい」となるわけです。

包装を手伝っていると、本屋のオーナーが「また新店を出すから、手伝いに来てよ」と言ってくれます。それは機械を買ってくれるということ。こうやって信頼関係を築き、売り上げを伸ばしていきました。当社では書店のオープン時に手伝うサービスを「猫の手包装支援」と呼び、現在も続けています。

私は「機械を売るのではなく、買ってもらう仕組みを考えるのが仕事だ」と考えます。機械は目に見えるから、まねをするのは容易です。しかし、機械の売り方は見えないので、なかなかまねができません。売り方を工夫すると、参入障壁を築くこともできます。当社が圧倒的な業界シェアを維持しているのは、こうした取り組みの成果です。

大嶺 メンテナンスにも画期的な手法を取り入れていますね。

大石(孝) 当社の包装機を導入した書店は全国に点在するため、修理は深刻な課題でした。店のオープン時は無料で猫の手包装支援を行いますが、修理時は無料で出張できません。そんな折、ヤマト運輸が「宅急便」を始めるという情報が入り、素晴らしいアイデアがひらめきました。

まず、機械の寸法を宅急便の箱に入るサイズに変更して普及を図りました。そして故障の連絡が入ると、代替機を箱に入れて書店に送ります。到着したら、故障品を箱に入れ替えて送り返してもらい、修理期間中は代替機を使ってもらいます。修理が終わると機械を箱に入れて発送し、代替機を返却してもらうわけです。これだと会社にいながら何台でも修理できますから、効率と経費がまるで違います。

タナベ経営 経営コンサルティング本部 本部長代理 戦略コンサルタント 大嶺 正行 沖縄支社長、東北支社長を経て、2011年より東京本部へ。幅広い分野でのコンサルティング経験を生かし、コンサルティング・セミナー・各種講演の第一線でプレーイングマネジャーとして活躍している。経営者のパートナーとして、経営全般の高い視点からクライアントの経営判断を支援。成果に直結する実践的なコンサルティングを展開し、クライアントから厚い信頼を得ている。
タナベ経営 経営コンサルティング本部
本部長代理 戦略コンサルタント 大嶺 正行
沖縄支社長、東北支社長を経て、2011年より東京本部へ。幅広い分野でのコンサルティング経験を生かし、コンサルティング・セミナー・各種講演の第一線でプレーイングマネジャーとして活躍している。経営者のパートナーとして、経営全般の高い視点からクライアントの経営判断を支援。成果に直結する実践的なコンサルティングを展開し、クライアントから厚い信頼を得ている。

ダイワハイテックス 代表取締役 大石 智也氏 1985年東京都板橋区生まれ。2008年同社入社。大阪支店で4年間の技術部勤務ののち、東京本社に異動。技術部、経理部、生産責任者を経て、2019年1月同社代表取締役に就任。さまざまな部署や立場で仕事をしてきた経験を生かし、これまで以上に「お互いに誇りを持って働ける会社」を目指し日々まい進中。
ダイワハイテックス 代表取締役 大石 智也氏
1985年東京都板橋区生まれ。2008年同社入社。大阪支店で4年間の技術部勤務ののち、東京本社に異動。技術部、経理部、生産責任者を経て、2019年1月同社代表取締役に就任。さまざまな部署や立場で仕事をしてきた経験を生かし、これまで以上に「お互いに誇りを持って働ける会社」を目指し日々まい進中。

書籍包装のノウハウを生かし物流業界へ参入

大嶺 出版不況が叫ばれて書店の経営が厳しさを増す中、通販を中心とした物流業界へ進出されました。その経緯をお聞かせください。

大石(孝) コミックシュリンカーの後も、モノづくりに意欲的に取り組み、各種の包装機・梱包機に加えて書店で使用する防犯システムや研磨システムを開発。さらに売り場づくりのサポートツールとなる販促アイテムなど新たなサービスを展開していきました。そして自社の持つ商品や市場を見極め、自社の力量に合った適正規模を深慮した末に、物流業界への参入を決めました。

大嶺 物流業界では後発になりますが、何が"強み"になりますか。

大石(孝) 書店と同様に、機械と資材をセットにしたビジネスが強みになると考えています。この強みを生かして、お客さまの立場に立った視点から経費や時間を大幅に削減する製品・サービスを提案します。

大嶺 "顧客視点"の発想が成功の鍵を握っているのですね。「よりコンパクトな商品を開発する」という考え方は、物流分野でも応用しているのですか。

大石(孝) 地価が上がって有効な面積をどう活用するかが至上命題になっていますから、なるべく小さくて軽い製品が良いに決まっています。しかし、そのようなお客さまの思いを感じられないメーカーの技術者がいまだに多いのは、残念です。

当社はお客さまに喜んでいただける製品を目指し、小型・軽量・簡単移動にこだわった商品開発に取り組み、自動バブルシート包装、自動シュリンク包装、自動ラベル貼り付け、自動ダンボール箱梱包、自動仕分けなどを行う機械・システムを物流業界に提供。オートメーション化を促進し、大幅な費用や時間の削減を実現しています。現在は、このような物流業界向けの業務を行う「通販支援事業部」と、従来からの書店向けの業務を行う「店舗支援事業部」に分かれて事業を展開しています。

D-Labo 内の様子。自社で開発から販売まで手掛けるからこそ、アフターサービスまで顧客ニーズに高いレベルで応えることが可能
D-Labo 内の様子。自社で開発から販売まで手掛けるからこそ、アフターサービスまで顧客ニーズに高いレベルで応えることが可能

タナベ経営 経営コンサルティング本部 部長 戦略コンサルタント 山村 隆 中堅・中小企業へのマーケティングや人事制度構築のコンサルティングを展開。「経 営は関わる人を幸せにする仕組みづくり」をモットーに、クライアントの特性に応じ たシステムを導入している。特にインターネット(オンライン)とリアル(オフライン) を融合したマーケティングコンサルティングや人事コンサルティングが持ち味。
タナベ経営 経営コンサルティング本部 部長 戦略コンサルタント 山村 隆
中堅・中小企業へのマーケティングや人事制度構築のコンサルティングを展開。「経営は関わる人を幸せにする仕組みづくり」をモットーに、クライアントの特性に応じたシステムを導入している。特にインターネット(オンライン)とリアル(オフライン)を融合したマーケティングコンサルティングや人事コンサルティングが持ち味。

100年企業にするためにやるべきことを考え、実行したい

山村 大石智也社長は、2019年1月に代表取締役就任を果たされました。会社を承継するに当たっての思いをお聞かせください。

大石(智) 「社長になってくれ」と言われた時、「ついにこの時が来た」と思いました。同時に、「この役目は、創業者を父に持つ私にしかできない」と冷静に受け止めることができました。当社に在籍している姉と二人三脚で経営に当たるつもりです。また、同世代の社員たちが実績を積み、幹部になっているので心強いです。彼らの協力も得ていこうと思っています。

山村 会長は事業の成長に伴ってより良い人材を集め、事業と人材を掛け合わせてきました。今後はどうしていきたいとお考えですか。

大石(智) まず、この会社を100年企業にするためにやるべきことを考えたいですね。その中で、次世代を担う社員が新しい事業を立ち上げ、新たな収益を上げていく環境を整えたい。

人材については、お客さまを喜ばせるアイデアが詰まった当社らしいモノづくりに、意欲的に取り組める新卒者を求めていくつもりです。

山村 社長は数字に強く、製造が分かり、営業にも意欲的であり、ダイワハイテックスらしさを兼ね備えておられます。次代に向けて、どのような人材を育成したいと思われますか。

大石(智) 当社の特長は、すごくポジティブで貪欲な人材が多いことだと思います。そして意欲的に成長しようとする人材には、会社が費用を負担して学校に通わせたり、新しい技術を学んでもらったりしてきました。私もその方針をしっかり引き継ぎたいですね。

山村 今後も大切にしたい"ダイワイズム"はありますか。

大石(智) 「メーカーにこだわる・自分で作ったモノを自分で売る・下請けはしない」に加え、どうやったらお客さまに喜ばれるかを常に考えることです。

現在、私はダイワハイテックスのどこが評価されているのかを再確認して、お客さまとの接点を広げることに取り組んでいます。その中で、「ダイワハイテックスの商品やサービスがないと商売ができない」というお客さまの声を聞くと、絶対に100年間は事業を続けなければならないと思います。そのためにも、社員が活躍できるような企業風土を会長からしっかり受け継いでいきます。

大嶺 会長が社長に期待することをお聞かせください。

大石(孝) 新規事業や新製品は非常に大切ですが、考え抜いて「やるぞ!」と挑んでもうまくいかないもの。自社がやっている事業に隣接する分野・部門で面白いことはないか、いま持っている技術を使って何かできないか......。そのような現在の延長線上で発想しないと、競争力が高く利益を生む事業や製品は生まれないことを肝に銘じてほしいですね。

会社としては、朝起きたときに「よし、行くぞ」と全社員が思う存在になってほしい。全社員が誇りを持てる会社、自信を持って仕事ができる会社になったらいいですね。

大嶺 現在、創業50周年(2028年)へ向けた中長期経営計画を作成中ですが、100年先も一番に選ばれるファーストコールカンパニーへ成長されることを祈念いたします。本日はありがとうございました。

PROFILE

  • ㈱ダイワハイテックス
  • 所在地:東京都板橋区坂下1-34-27
  • 設立:1978年
  • 代表者:代表取締役 大石 智也
  • 売上高:18億5000万円(2019年1月期)
  • 従業員数:63名(2019年2月現在)

  • お問合せ・資料請求
  • お電話でのお問合せ・資料請求
    06-7177-4008
    担当:タナベコンサルティング 戦略総合研究所